新・ことば事情
5513「てっぱい」
近くのスーパーの食品売り場で見かけた、ある食品の名前が書かれていた札。そこには、こう書かれていました。
「てっぱい」
え?何?「てっぱい」って?初めて見ました。
その札の所へ行って商品を見てみたら、私の知っている言葉で言うと、
「ぬた」
でした。「ぬた」のことを「てっぱい」というのでしょうか?関西弁かな?こういう時は、牧村史陽『大阪ことば事典』ですね!引いてみましょう。
「てっぱい」・・・ありゃ・・載っていない。
『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』『明鏡国語辞典』『デジタル大字泉』『岩波国語辞典』『新潮現代国語辞典』『新明解国語辞典』『三省堂国語辞典』には、「てっぱい」は、
「撤廃」
しか載っていませんでした。全然意味が違います。
こうなったら、ネット検索。お、出て来た!「ことバンク」の「日本の郷土料理がわかる辞典」によると、
「てっぱい」=「香川の郷土料理で、ふなを酢締めにし、大根・ねぎ・とうがらしなどを加えて酢みそで和えたもの。農閑期に入る秋から冬にかけて、水を抜いたため池のふなをとって作った。」
とありました!香川なのか!道理で『大阪ことば事典』では出て来ないはずだ!
また、MBSさんの「京都見聞録」というサイトには、
「京野菜 九条ねぎのいかてっぱい」
というのが載っていました。それによると「てっぱい」は、
「細ねぎと寒ぶなを白みそで和えた香川県の郷土料理」
で、香川県では「ふな(鮒)」のことを「鉄砲」と呼んでいたことから、
「鉄砲和え」
と言っていたのが、のちに訛って、
「てっぱい」
となったとのこと。「鉄砲」は一般的には「ふぐ」を指すと思ったら香川では「鮒」なのか。
ちなみに、「ぬた(饅)」は、
「料理の一種。細かく切った魚肉、野菜などを酢味噌であえたもの。ぬったあえ。にたなます」(『精選版日本国語大辞典』)
ですから「てっぱい」は「ぬたの一種」には違いありませんね。