新・ことば事情
5504「最接近」
「台風8号」が日本列島にやって来ました。各地に爪痕を残しています。
その、台風関連の用語で最近よく耳に(目に)するものに、
「最接近」
があります。文字で見れば意味は解りますが、「さいせっきん」という音を耳で聞いたときに、まず思い浮かべるのは、
「再接近」
です。同音語の多い日本語では仕方がない事ですが、文字では「最接近」と書いてあってもアナウンサーやナレーター(や、原稿を書くディレクターや記者)は、
「最も接近します」
と言い(書き)換えて、誤解のないようにする工夫が必要ではないでしょうか?
調べていたら、今から10年前の記述で、こんなものがありました。
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「2004年10月末に、広島で開かれたNNNブロック研修会に出席した広島テレビの若いアナウンサーが、持参した台風中継のVTRの中で、
「最接近(サイセッキン)」
という言葉を使っていたので、叱られていました。これでは聞いた人が、
「再接近」
と、間違うおそれがあるからです。ここは耳で聞いてわかりやすい、
「最も近づくのは」
と言い換えるべきだというのが講師陣の結論でした。災害情報は、伝わりやすい・わかりやすい言葉で伝えるという基本に、ふだん以上に気を配る必要があるでしょう。」
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もう、10年前から言っていたんですね!でも、なかなか直らないものなのですねぇ。
「台風」関連で似たような言葉では、
「再上陸」
があります。これも、
「(九州に上陸したあと)紀伊半島に再上陸」
のように使います。意味は、
「日本列島全体にとっては、再上陸」
ということですが、
「紀伊半島に再上陸」
だけを聞くと、
「紀伊半島に2度目の上陸をした」
かのようにも感じられます。かといってこれは、言い換えが難しいのですが、
「今度は、紀伊半島に上陸しました」
のような言い換えは可能でしょう。
2004年10月に書いた「平成ことば事情1934大阪に再上陸」もお読みください。