新・ことば事情
5491「耐食鏡」
大阪の地下鉄心斎橋駅でトイレに入った時、用を済ませて手を洗おうとしてふと、目の前の「鏡」に目が行きました。その下のほうにこんな文字が。
「TOTO 耐食鏡」
この、
「耐食」
という文字に目が留まったのです。
「耐蝕」
ではなく「耐食」。何を「食」べるのを「耐」えているのでしょうか?
『広辞苑』を引くと、
「たいしょく【耐蝕・耐食】」=腐食しにくいこと。
と両方の表記がありました。『精選版日本国語大辞典』でも、
「たいしょく【耐食・耐蝕】」=金属などの腐食に耐えること。くさったりむしばまれたりしにくいこと。
とありました。そうか、
「腐食」
も、本来は、
「腐蝕」
だったのだな。それが「蝕」が表外字なので「食」で代用していると。
それと同じことが、
「耐蝕→耐食」
でも起きているのですね。『新聞用語集2007年版』で「ふしょく」を引くと、
「腐蝕→ ◎腐食」
となっており、「◎」は、
「国語審議会『同音の漢字による書きかえ』の語」
とありました。