新・ことば事情
5486「勝ち切る」
ブラジルワールドカップ前の調整試合・対コスタリカ戦で、日本は前半に1点先取されたものの、後半にメンバーを入れ替えて3点を取り、3対1で勝利しました。(ワールドカップが始まってしまうと、もう、随分前のことのような気が・・・)
これを伝えたNHKの東京のスタジオの女性アナウンサーが、
「日本は3対1で勝ち切りました」
と言っていたのに違和感がありました。サッカーの言葉では、この、
「勝ち切る」
は、いつの頃からかよく使われていますが、これは、
「勝ちました」
のほうがいいのではないか?
「勝ちました」と「勝ち切りました」の違いはどこにあるのでしょうか?
うーん、「勝ちました」はそのまま「勝ったか負けたか」という事実を伝えているのに対して、「勝ち切る」は、
「完全に勝つ」
「最後まで危なげなく勝つ」
「反撃・追撃を断ち切って、引き分けに持ち込まれることなく逃げ切って勝つ」
というようなイメージがあります。
辞書に載っているかな?例によって、まず『三省堂国語辞典』を引きます。
あ・・・載ってないわ。『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』『新潮現代国語辞典』『岩波国語辞典』にも載っていません。
「~し切る」で引いてみてはどうでしょうか?『広辞苑』には、
「(動詞の連用形に付いて)はっきりけじめをつける、終える、果たす、尽くすなどの意を表す。」
とありました。なるほど。『精選版日本国語大辞典』にも、
「(動詞の連用形に付けて補助動詞として用いる)(1)すっかり・・・し終える。完全にすます。・・・し尽くす。(2)十分に・・・する。ひどく・・・する。(3)きっぱり・・・する。」
などと載っていました。
この「完全に・・・する」が、一番しっくり来る気がします。「~しきる」の形ですね。
日本代表には、20日のギリシャ戦、「勝ち切ってほしい」ですが・・・でも「勝ってほしい」でいいと思うけどなあ・・・。
(2014、6、19)
(追記)
20日のギリシャ戦、0対0の引き分けに終わりました・・・。残念です。
大久保、シュートいっぱい打ったんだけどなあ。NHKのお昼のニュースでは、
「大久保、ここでもシュートを決めきれません」
と原稿を読んでいましたが、これは、「決めきれません」ではなく、
「決められません」
じゃないのかなあ。「~きる」が好きだなあ、最近。
(2014、6、20)