新・ことば事情
5484「キーマンか?キーパーソンか?2」
「平成ことば事情4953」で書いた「キーマンかキーパーソンか?」の続報です。
ポリティカルコレクト(政治的に正しい言葉)として「キーマン」の「マン=男」なので、「女性には使えないからドチラニモ使える言葉として、
「キーパーソン」
を使うかどうかについて、4月に大阪で行われた新聞用語懇談会放送分科会で各社に
「『キーマン』の代わりに『キーパーソン』を使うことはありますか?(「キーマン」と「キ
ーパーソン」、どちらを使っていますか?)」
と伺いました。その際の各社の回答は、
(毎日放送)決めていないが、女性の場合は「キーパーソン」。
(朝日放送)できるだけ「キーパーソン」を使うよう意識・指導している。女性の場合は特に「キーマン」は使わない。(出てしまうことはあるが・・・)
(テレビ大阪)「キーパーソン」を使う。ニュースで女性が「キー」になることが増えて来た気が・・・。「キーウーマン」とは言わない。
(関西テレビ)まだ「キーマン」もあるが、女性には「キーパーソン」を使う。
(TBS)決めていないが、傾向は女性を含めて「キーパーソン」。「サラリーマン」と「OL」を区別しないで「会社員」で済ませるように。
(テレビ朝日)決めていない。
(フジテレビ)決めていない。過去1年のデータベース検索では、「キーマン」=5件(サッカーの記事)。「キーパーソン」=2件(この2件は、同じ記者が書いた記事)。
(テレビ東京)「キーマン」「キーパーソン」両方使っている。特に決めていないが、女性には「キーパーソン」。「カメラマン」が女性の場合には「カメラウーマン」とは言わずに「女性カメラマン」としている。
(日本テレビ)特に決めていないが、「キーパーソン」を使う傾向。あるいは「キーになる人」というような言い方。
(共同通信)2010年以降のデータベースでは「キーパーソン」は1件のみ。しかも、カギカッコの中で使われている。それ以外はほとんど「キーマン」。
(NHK)「キーパーソン」「チェアパーソン」などは、1980年代アメリカでの「ポリティカル・コレクト」(政治的に正しい言葉)運動から出て来た表現。現状はデーターベースでの比率は、「キーマン:キーパーソン」=「2:1」ぐらい。
「チェアパーソン」は使わない。男は「俳優」女は「女優」というのも、全部「俳優」にする方向だが、定着するかどうか。
(読売新聞)決めていない。政治的な背景のある表現。女性を全て「キーパーソン」にして男は「キーマン」だと、これもまた問題視されるのでは?
といったものでした。
その後、5月末に岩手・盛岡で行われた新聞用語懇談会春季合同総会でも、新聞各社に伺いました。
(産経新聞)基準は無い。2009~2014年のデータベースで検索したら、
「キーパーソン」=45件、「キーマン」=237件だった。
「キーパーソン」は企業のトップなど経済・外交の記事で、「キーマン」はスポーツ面と政治面でよく使われているようだ。ただし、スポーツでも女子チームである「なでしこJAPANのキーマン」とは使わない。もともと日本語では「カギを握る人」。「『キーマン』を全部『キーパーソン』に直せ」とは言っていない。
(朝日新聞)ジェンダーで規制はしていない。高校野球の記事では「試合のキーマン」、外交の記事では「外交のキーパーソン」「核軍縮のキーパーソン」のように使われているようだ。
(毎日新聞)しばりはない。「キーマン」と「キーパーソン」は「ほぼ半々」だが、やや「キーマン」のほうが多いようだ。
ということでした。使っちゃダメということではないようですね。