新・ことば事情
5483「うっすりと」
小学4年生の娘が学校で習ったという文部省歌「牧場の朝」。その楽譜を見せてもらうと歌詞はこんな感じでした。
ただ一面に立ちこめた、まきばの朝の霧の海
黒い底からいさましく、鐘が鳴る鳴るカンカンと
ポプラ並木のうっすりと
この「ポプラの並木」のあとの表現が、「うっすらと」ではなく、
「うっすりと」
なのです。そんな言葉は初めて聞きました。
辞書を引いてみましょう。『広辞苑』。載っていました。
「うっすり(薄り)」=「うっすら」に同じ。
『精選版日本国語大辞典』も「空見出し」で、
「うっすり(薄)」=(「と」を伴う場合が多い)→うっすら
となっていて、用例は1693年の「俳諧・深川」から、
「うっすりと門の瓦に雪降て」
でした。『デジタル大辞典』『明鏡国語辞典』には載っていません。
『新明解国語辞典』では「うっすら」の意味の説明の中に「うっすり」がありました。
『三省堂国語辞典』は、見出しが立項されていました。
古い言葉としては「あった」のですね。
それともう一つ気になったのは、2番の歌詞の中に、
もう起き出した 小屋小屋(こやごや)の
とあるのですが。この「小屋小屋」が「連濁」しているのです。あんまり聞いたことがないですよね、「こやごや」。
文部省歌にはそういった言葉が残っていて、それを小学校でも教えていて、子どもたちは特に何も感じずに吸収しているのだなあと感じました。