新・ことば事情
5459「空振る」
5月14日の日経新聞夕刊コラム「プロムナード」で、作家の宮内悠介さんという方が、
「ボールを空振ること」
というタイトルのコラムを書いていました。この、
「空振る」
という動詞、見慣れません。意味はもちろん解ります、
「『空振り』すること」
ですね。しかし「空振り」という「名詞」はあっても「空振る」という動詞はあまり見ない、聞かない。もう認められているのでしょうか?
新しい言葉を素早く取り入れることで定評のある『三省堂国語辞典・第7版』を引いてみましょう!
お!「見出し」こそ立てていないが、名詞の「空振り」の語句説明の中に、
【動】空振る(自五)
とありました!【動】は、もちろん「動物」ではなく、
「動詞」
の意味ですね!載ってるんだあ。でも、まだ「見出し」にはなっていない。新しい言葉だと思われます。
『広辞苑・第6版』は、
「空振り」「カラフル」「空風呂」
は載せていますが、「空振る」は載せていません。『精選版日本国語大辞典』も同様です。
従来は、同様の意味のことを言う場合は、名詞「空振り」に動詞の「する」を付けて、
「空振りする」
と言っていたはずですが、短くなってきたのですかね。
グーグル検索では(5月16日)
「空振り」 =102万0000件
「空振る」 = 4万9400件
「空振りする」=15万0000件
でした。やはりまだ「空振る」は、それほどは定着していないみたいですね。でも結構、使われてはいます。
なお、調べてみると、宮内さんは1979年生まれ、ことし35歳。若い方です。私はコラムのタイトルを見たときに、この「空振る」は、
「野球(のスイング)のこと」
だと思ったのですが、宮内さんの「空振る」は、なんと、
「フットサル」(つまり「サッカー」のこと)
だったのです。サッカーで「空振り」するのは・・・うーん、ちょっと、カッコワル・・・。