新・読書日記 2014_059
『日本語スケッチ帳』(田中章夫、岩波新書:2014、4、18)
2012年の「読書日記036」で、前著『日本語雑記帳』(岩波新書:2012、2、21)を紹介しましたが、その際に、
「著者は御年90歳の日本語学者。元・国立国語研究所の研究員でもある。」
と書いた。が、訂正させてください!「1932年生まれ」だそうですから、当時は、
「御年80歳」
でした。これはねえ、岩波新書の「奥付が間違っていた」んですよ!プンプン。
いま、修正します。
その本から2年、「雑記帳」に続いて「スケッチ帳」。いろいろと「言葉」の雑感をちりばめた雑学が満載!「お・も・て・な・し」に始まって「ウッソー!」「ホント?」、意味が変わりつつある「鳥肌が立つ」「君子豹変」、昔は「男」にも使った「なでしこ」。人名と地名、スポーツの言葉、文体・表現・敬語、翻訳の世界、外国語から外来語・・・と盛りだくさん!まさに「言葉のスケッチ帳」である。「スケッチブック」ではなく「スケッチ帳」にしたのは、前著が「雑記帳」だったから、それにあわせたんでしょうね。
硫黄島に散った栗林中将の「散るぞ悲しき」を、大本営が「悲しき」は女々しいとして「散るぞ口惜し」に直してしまった話。でもこれって「~ぞ○○き」という「係り結び」なのに「散るぞ口惜し」ではこの「係り結び」が無くなってしまっていると。その並びで、1949年シベリア抑留から復員して来たプロ野球・水原茂選手の手記のタイトルが、
「よくぞ還れり」
だったのを見て、田中さんは、
「係り結びが違ってらぁ」
と言ったという。(正しくは「よくぞ還れる」=連帯形結び)
それを見て私は、慶応大学の応援歌「我ぞ覇者」(藤浦洸作詞・古関裕而作曲=1946年)の中に、
「よくぞ来たれり 好敵・早稲田」
という一節があることを思い出した。この、「よくぞ来たれり」も、本来は、
「よくぞ来たれる」
なのかな?わかりませんが。勉強になる一冊です。