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『道浦TIME』

新・読書日記 2014_055

『夢と魅惑の全体主義』(井上章一、文春新書:2006、9、20)

 

中川右介さんの『悪の出世学』の書評を書いていた井上章一さん。その井上さんも、たしか「全体主義」の本を書いていたなあ・・・と書棚を捜したら、買ったまま読んでなくて眠っていたこの本が出て来ました。400ページ以上あって、分厚い本ですが、驚いたのは、この本の「帯」に並んだ3人の写真が「ヒットラー・スターリン・毛沢東」。中川さんの本の主人公と全く同じだったってこと!"これは今、読まなくちゃ!"と読みました。その帯の「文字」は、

「独裁者は『建築』でうったえる」

とあり、全体主義が築いた建築物の特徴を記している。建築物でその力を誇示するということを行っていると言うのだ。中でも印象に残ったのは、1936年9月11日にニュルンベルクで開かれたナチス第8回党大会の様子。ここで画期的な照明の演出が試みられたという。ナチスお抱えの建築家シューペアの発案で、会場のツェッペリン広場は、130台ものサーチライトが用いられ、上空を照らしたのだ。光の柱・列柱廊が、無限に高い柱となった。その写真も載っているが、会場は「まるで氷の神殿にいるかのように、荘厳かつ華麗であった」と、イギリスのヘンダーソン大使は書き記しているという。「光のドーム」である。うーむ、スゴイ。大衆の心をつかむには、演出も重要。

さらに、こんな記述もあった。

「ヨーロッパのファッショ的な政権は、あかるいユートピア的な未来像を国民に提示した。ムッソリーニもヒットラーも、ともに権力の簒奪者(さんだつしゃ)である。支配の正統性は、もちあわせていない。その不足をおぎなうためにも、彼らははったりめいた劇場型政治へ傾斜した」

なるほどねー。

後半は日本型のファシズムの建築について、満州での建築なども比較しながらの話。いやあ、勉強になりました。


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(2014、4、20読了)

2014年5月 4日 17:13 | コメント (0)