新・ことば事情
5432「『お』と『ご』」
「御」を「お」と読むか「ご」と読むか?
は、その後に来る言葉が「和語か?漢語か?」によるというのが原則です。つまり、
「お」+「和語」
「ご」+「漢語」
ということですが、実はこれにはたくさん「例外」があるのでややこしい。例えば、
「電話」
は漢字2文字ですので「漢語」だと思いますが、
「ご電話」
とは言いませんね。絶対に、
「お電話」
と言いますね。これは「電話」という漢語が、既に「和語並み」に我々の生活の中に溶け込んでいることを示すのだと思います。
しかし、生活に溶け込んでいても「ご」とも「お」とも言うことがあります。
「返事」
は「漢語」だと思いますが、
「ご返事」「お返事」
両方とも使いますよね。これは「漢語」が「和語」に溶け込む途中だということなのでしょうかね?
そもそも、「お」が付くかどうかは、
(1) その物が、敬語・美化語を使うに値する「尊敬の対象」の物であること。
(2) 文脈上「お」「ご」を使う文章の中で出て来ること。
(3) 文脈の中で並列で使われる片方の物に「お」「ご」が付いている場合。
等が考えられます。
(1)で言うと、関西弁や幼児語では「古くからの食べ物」に「お」が付きます。例えば、
「お豆」「お米」「お芋」「お豆腐」「お揚げ」「お餅」「おかき」
といった具合です。これはもしかしたら、宮中の「女房詞」の影響があるかもしれません。(女房詞では、「豆腐」は「おかべ」と言ったり「お餅」は「おかちん」と言うなど、別の言い方があったりするのですが)
(2)で言うと、これはまさに「敬語の使い方」の中の分類ですね。
「お返事」「ご返事」「お電話」「ご本」「お尋ね」「ご努力」
などは、これにくくられますね。
(3)で言うと、そもそも「外来語」には「お」も「ご」も付かないので、放送では「誤った使い方」とされる、
「おビール」「おコーヒー」
などが挙げられます。これはたぶんですが、こういった言葉と一緒に出されるのが、
「『お酒』になさいますか?それとも『おビール』?」
「『お紅茶』になさいますか?それとも『おコーヒー』?」
みたいな使われ方なのではないかと。「お酒」と言っているので、そのバランスで「ビール」にも「お」を付けて「おビール」になるのではないかなあと思います。(でも「ウイスキー」は言いにくいから、「おウイスキー」とは言いませんね。)「紅茶」に「お」を付けるのもあまり好きではありませんが、「お茶」は「お」が付くんだから「お茶」の一種である「紅茶」に「お」が付いてもおかしくないという判断なのでしょうか?それで、一緒に提示される飲み物の「コーヒー」も、バランスを取って「お」が付いて「おコーヒー」になるのではないかと思われます。
「調味料」の場合で「お」が付くのは、
「砂糖・塩・酢・醤油・味噌」
これらは、
「お砂糖・お塩・お酢・お醤油・お味噌」
と、全て「お」が付きます。お気づきの様に、"調味料の基本"と言われる5つ、
「さ・し・す・せ・そ」
ですね!ここに入っていない物でも大事な、「出汁(だし)」は、「お」が付いて、
「お出汁」
と言います。でも「みりん」は、
「おみりん」
とは言いません。外来語でも身近な「ソース」は、
「おソース」
と言いますね。
野菜で「お」が付くのは、
「豆」「ネギ」「芋」「大根」
「お」が付かない物は、
「白菜」「キャベツ」「キュウリ」「ごぼう」「セリ」「タケノコ」「レタス」「蓮根」「蕗(ふき)」
略語になると、「カボチャ」は、
「おカボ」
という言い方もします。「キノコ」類は「お」が付きません。
「松茸」「シイタケ」「エノキ(ダケ)」「マイタケ」
果物で「お」が付くのは、
「みかん」「りんご」
ぐらいですかね?「お」が付かないのは、
「バナナ」「パイナップル」「スイカ」「キーウイフルーツ」「グアバ」「グレープフルーツ」「ブドウ」「桃」「スモモ」「メロン」「サクランボ」などなど。
考えれば考えるほどわからなくなってくる気がします。
こりゃあ、外国人の方は覚えきれないよなあ・・・。