新・ことば事情
5431「電車内での化粧」
これは「ことば」とは直接関係ないですが、けさの通勤途中の電車内でのできごと。静かな車内に急に中年の男性の声が聞こえて来ました。携帯電話で話しているぐらいの大きさの声です。しかしそれは携帯の通話ではなく、なにやら"モメゴト"っぽい感じ。そちらの方を見ないようにしながら、耳だけそちらにピント?を合わせて聞いていると、どうやら車内で化粧をしている女性に対する言葉のようです。
「知ってますか!?大体、電車内で化粧をするなんて、海外じゃあ"売春婦"だと思われるんですよ!」
声は押さえてはいるが、かなりキツイ物言いです。女性がこれに何か答えているかどうかは、わかりません。女性の声は聞こえて来ません。声の方向から察すると、座っている人ではなく、立っている男の人のようです。すると、その化粧をしている女性も、立ったまま化粧をしているのでしょうか?おそらくそうなのでしょう。声はその後は続くことなく、収まったようです。ちょっと、ホッとしました。
「電車内の化粧」と言えば、先日、やはり通勤電車の中で、吊革をつかんで立ちながら本を読んでいて、ふと隣りに立っているOLらしい女性の方を見ると、立ったまま化粧をしていました。化粧の粉がこちらに付くと嫌だなあなどと思い、少しいやーな気がしましたが、よく見るとその女性は、
「立ったまま、『眉毛』を描いている」
のです!走っている電車の中ですよ。いつ急ブレーキがかかるか、揺れるかもしれない電車の中で立ったまま眉毛を描く!これは「木下大サーカス」クラスのスリルではないですか!もし、ガクン!と揺れたら、眉毛は無残な姿に。落書きされたような顔で会社に行くのでしょうか???これって、もしそうなったら、誰の責任?運転士?いやいや、電車の中で立ったまま眉を書いている"本人の責任"としか言えないでしょうね、さすがに。
しかし、ジーッと見つめるのも失礼だと思って、あんまりじっくりとは真横の女性の方を見られなかったのですが、ここで一つ疑問が。
「この人は、鏡も何も見ずに『眉毛』を描けるのか?」
ということです。「口紅」の場合は、まあ唇が出っ張ってるから、感覚だけで塗ることはできるかもしれませんが、さすがに「眉毛」をフリーハンドで描いたら、
「福笑い」
みたいになるのではないでしょうか?眉毛を描いたことがないのでわかりませんが。
ドキドキしながら横の様子をうかがっても、右手は眉毛を描く筆、左手は吊り革をつかんで立っています。鏡らしきものはありません。
あ、もしかしたら「窓ガラス」に映る自分の顔を見て描いているのでは?いや、それも「夜」なら、顔が映るかもしれないが、今は「朝」。外が明るいから「顔」は映らない。うーん、本当に何も見ずに描いているのか?
降りる駅が近付いてきた時に、もう一度、ソッと横の人の様子をうかがうと、答えが出ました。なんとその人は、
「吊革を握った左手に『スマホ』を持っていた」
のです。その電源の入っていないスマホの暗い画面に自分の顔を映して、「眉毛」を描いていたのです!
うーん、「スマホ」って、電源が入ってなくても使えるんだ。
キレイに眉毛を描き終えたその女性は、颯爽と電車を降りて行ったのでした・・・・。