Top

『道浦TIME』

新・ことば事情

5420「飛ぶか?跳ぶか?」

同音異義語の「飛ぶ」と「跳ぶ」。ソチ五輪のニュースの際には、その使い分けに気を配りました。

「スキー・ジャンプ」は「飛ぶ」

「フィギュアスケート」は「跳ぶ」

「スノーボード・ハーフパイプ」は「跳ぶ」

で、一番の問題は、

「スキー・モーグル」は「跳ぶ」なのか?「飛ぶ」なのか?

という点です。

「こぶ」を越えるために「ジャンプ」する程度なら、

「跳ぶ」

だと思いますが、「ジャンプ」した空中でクルクル回ったりひねったりしている様子を見ていると、

「飛ぶ」

なのかなあという気もして、

「飛ぶように跳ぶ」

ということなのかな?困ったら「平仮名」で、

「とぶ」

にしようかなあと悩んだのでした。たぶん、結局「跳ぶ」にしたと思うけど。

そもそも「とぶ」とは、どういう言葉なのか?

「自らの力によって、身体全体(特に足が)地面を離れて空中にある状態」

という説明はいかがでしょうか?

『三省堂国語辞典・第7版』で「とぶ」を引いてみると、いくつも意味が書かれていました。

つばさを使って空中を進む。(例)「鳥がとぶ」「とんぼがつぶ」

プロペラやジェットエンジンなどの推進力によって空中を移動する。(例)飛行機がとぶ」「ヘリコプターがとぶ」

力が加わって空中を進む。()「ボールがとぶ」「しぶきがとぶ」「つばがとぶ」

風に吹かれて空中にまい上がる。(例)「木の葉がとぶ」「シャボン玉が飛んだ」

飛行機で旅をする。(例)「成田からパリへとぶ」

散る。(例)「しずくがとぶ」「火花がとぶ」

「つながっていたものがはなれる」(例)「ヒューズがとぶ」「首がとぶ」(=失職する)

大いそぎで走る・移動する。()「伝令がとぶ」「記者が現場にとぶ」「飛んで帰る」

間をおく。(例)「あみ目がとぶ」

順序をぬかして、先へ行く。(例)「ページがとぶ」「そのあたりから記憶が飛んでいる」

急に広まる。(例)「うわさがとぶ」「デマがとぶ」

遠くへにげる。(例)「犯人が海外へとぶ」

(ある動作が)すばやく・勢いよくなされる。(例)「外掛けがとぶ」「びんたがとぶ」

ある人に大声などを発する。(例)「やじがとぶ」

消える。うすくなる。()「色がとぶ」「アルコールがとぶ」「データがとぶ」

()自由に活動する。()「とんでる女」「あいつとびたいんだよ」

なんと16種類も!難しいはずだ。13番目の用例「外掛けがとぶ」の「外掛け」は、「相撲や柔道の技」ですね。これはちょっと、わかりにくい。

でも、よく見てみると、これは「飛ぶ」の説明ですね。「跳ぶ」の見出しは、その次にありました・・・。

地面をけって高く上がる。はねる。(例)「ぴょんととぶ」

はねてこえる。()「みぞをとぶ」

(中部方言)走る。(例)「跳びっくら(=かけっこ)」

3種類の意味が記されていました。

うーむ、この意味から言うと、いわゆる「ジャンプ」は全部、

「跳ぶ」

になりますね。ただ、「空中での滞在時間が長い」「飛ぶ」の3番目の意味、

「力が加わって空中を進む」

が該当することもあるということですね。なかなか難しいです。

(追記)

「平成ことば事情5364 跳ぶと跳ぶ」もお読みください。おんなじようなタイトルで、書いてるな。

(2017、8、31)


(2014、4、14)

2014年4月14日 16:35 | コメント (0)