新・ことば事情
5411「目配せと目配り」
4月1日、消費税が5%から8%になりました。
17年ぶりの税率の引き上げです。もう、そんなになるのか。ちょうど、うちの息子が生まれた年だったので、その息子が今、高校2年だから、計算は合っています。ずいぶん久しぶりという感じもします。
4月1日、安倍首相は、「消費税増税」に関してコメントを出しました。それを伝えたNHKのニュースが、
「国民生活に"目配せ"しながら」
と伝えたそうです。私は見てなかったのですが。これは正しくは、
「国民生活に"目配り"しながら」
ですね。「目配せ」と「目配り」。平仮名で書くと、
「めくばせ」「めくばり」
「目」は一緒(同じ)ですから違うのは、「くばせ」と「くばり」。
「せ」か「り」かの違いですね。どう違うのでしょうか?だいぶ違う気がしますが。
辞書を引きましょう。『精選版日本国語大辞典』では、
「めくばせ」(眴)!
こんな漢字があるのか!「目」へんに「旬」!本来の読みは、
「めくわせ」
だそうです。そこで「めくわせ」を引くと、
「まばたきして意志を伝えること。目を動かして合図すること。めくばせ。めぐばえ。めぐわえ。めくばし。」
とありました。
ここで「めくばせ」に戻ると、用例は1658年、江戸時代の浄瑠璃でした。その「語誌」を読むと、
「(1)中古には目で合図をすることを『めをくはす』『めくはす』といった。『め』は『目』、『くはす』は『食はす』で、目を合わせる意を表す。この『めをくはす』は中世には用いられなくなり、『めくはす』『めくはせ』の形のみが残った。(2)中古には『めくはせ』と清音であったが、中世末には第二音節が濁音化した『めぐはせ』も使われた。近世には第三音節を濁音とする『めくばせ』が表れた。(3)互いに目を交わすというところから『めくばせ』とほぼ同意の『めまじ(目交)』『めまぜ(目交)』も用いられていたが、現在では『めくばせ』が一般的である。」
とありました。ああ、長い引用!
この「眴」の項目の下に、
「目配り」
がありました。意味は、
「目を方々にくばって見ること。洩れのないように、注意してみること」
とあり、用例は、1717年、江戸時代の「節用集」でした。
つまり、「めくばせ」は「視線を合わせて合図をすること」であり、「めくばり」は「視線を方々に配って配慮すること」。やっぱり、意味が違いますね。