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『道浦TIME』

新・読書日記 2014_38

『源静香は野比のび太と結婚するしかなかったのか~『ドラえもん』の現実(リアル)』(中川右介、PHP新書:2014、3、4)

 

最近、とても積極的な執筆活動を続けていらっしゃる中川右介さんの著作。音楽関係の、非常に博識な高尚なものを書かれる中川さん。「クラシック・ジャーナル」の編集長が、なぜ「ドラえもん」?どういうように書くの?という興味があった。まあ、テーマが「ドラえもん」ですから、親しみやすい。

しかし「ドラえもん」が、実はこれほど深いものであったのか!ということで、「ドラえもん」を見る(読む)姿勢が変わってしまうかもしれない一冊。

一見「アホな(?)」「どうでもいいような(?)」テーマのようなタイトルだが、その後ろには、大変広大な世界が広がっていることを知る。タイトルは、"とっかかり"に過ぎないのだ。

当時の子どもの類型を、全てパターンとして秘めていた登場人物たち。彼らが体現したものはどのような「世界」だったのか?その意味するところは?

私(1961年生まれ)は、中川さん(1960年生まれ)とほぼ同世代なので当然、当時は「子供」ではあったが、微妙に「ズバリど真ん中」からはズレている世代。「ドラえもん」を読んではいたが、長編のアニメ映画などは見ていない。藤子不二雄先生は、学年誌に"並行して"(=パラレルワールド)「ドラえもん」の話を描き分けるという"超人的なワザ"で連載を続けていた。「ゴーストライター」など、当時はいなかったろう。アシスタントはいたかもしれないが、それすら怪しい。それがまた、スゴイよな。「ドラえもん」のポケットから何か道具を出してもらっていたかもしれないが(冗談)。「ドラえもん」から読み取る「スクールカースト」いじめ問題や、「郊外の家に住む」核家族問題、近郊都市問題、いろいろな視点から読み解けるんだよと示してくれたことが、すごく刺激的であった。


star4

(2014、2、20読了)

2014年3月27日 22:35 | コメント (0)