新・ことば事情
5402「火元のアクセント」
お昼のニュースの下読みをしているYアナウンサーの声が耳に入りました。火事のニュースです。その際に、
「火元とみられる部屋」
という一文の
「火元」
のアクセントが、
「ヒ/モトトミラレ\ル」
と「平板アクセント」になっていましたが、「火元」は『NHK日本語発音アクセント辞典』によると、「尾高アクセント」です。つまり、
「ヒ/モト\ト・ミ/ラレ\ル」
と2語に分けて読まなくてはなりません。
しかし「尾高アクセント」の名詞というのは、後ろに助詞の「の」が来た場合には、
「ヒ/モトノヘヤ」
というように、
「平板アクセント」
に変化します。正確に言うと、助詞「の」によって、
「後ろに来る名詞の修飾句の一部に組み込まれる」
ために、
「コンパウンドして『平板アクセント』になる」
のです。それをもって「火元」という単語のアクセントを全て「平板」にすることはできません。そして、そもそも「尾高アクセント」は、
「その『名詞』と『助詞』を区別して、『名詞』を際立てるため」
にも必要です。「形容詞句の一部分」になる場合は、あまり単独の名詞を際立ててしまうと文全体がぎくしゃくするので、「平板アクセント」にして形容詞句の一部分にするのですから、使われ方が違います。そういう作用が「コンパウンド」です。複合語や修飾節を、滑らかなつながりにするために、「かんな」を掛けているようなものですね。
「アクセント辞典にそう書いてある」というだけでは"単なる丸暗記"で、
「同じ単語なのに、アクセントが変わるなんて、おかしいよな!」
という疑問と不満を抱えたままになると思います。理屈好きの私はそう思います。
こういった理解・意識を持てれば、同じ単語でも文脈の中でアクセントが変わることに関して納得して習得できると思うのですが、いかがでしょうか?