新・ことば事情
5372「コイに塩素を入れた?」
2月23日の夜9時前のテレビ朝日のニュース番組で、「さいたま水族館」の魚が800匹死んだというニュースを放送していました。水族館の水の塩素濃度が普段よりも上がっていたことから、原因は、
「何者かがコイに塩素を入れたものとみられ・・・」
という原稿を読んでいました。私はそれを聞いて、一瞬、
「え?コイ(鯉)?鯉だけ?ほかの魚も死んだのでは?」
と感じ、次の瞬間、
「あ、『故意』か!」
と理解できましたが、これは同音異義語だけにわかりにくい。
「何者かが"わざと"塩素を入れたものとみられ」
にすれば、そういった誤解を避けられますね。しかし、もしこれが、
「濃い塩素を鯉の水槽に入れた」
ならば、
「何者かが、故意に鯉の水槽に濃い塩素を入れたとみられ」
というようになって、「アナウンサーの滑舌練習」の文章のようになってしまいます。
あ、それと気になったのは、女性アナウンサーが「水族館」を、
「スイゾクカン」
と「ク」を有声音で読んでいたことです。これは「ク」は「無声音」で読むべきです。その結果、「促音」(小さいッ)のようになって、
「スイゾッカン」
となるのが普通ではないでしょうか?『NHK日本語発音アクセント辞典』には、促音の「スイゾッカン」も載っています。
たとえば「小学校」という言葉は、文字通りであれば、
「ショウガクコウ」
ですが、「ク」が無声音になるので、聞こえ方としては、
「ショウガッコウ」
と「促音化」に進み、いまや「表記」も「しょうがっこう」と「促音表記」です。
一方、「熱気球」は、「熱」「気球」のそれぞれの意味がまだ強く残っているので、「ネツ」の「ツ」は無声化せずに、
「ネツキキュウ」
と読みますが、「水族館」の場合は「水族」と「館」が、それぞれ意味を強く持っているというよりは「水族館で1語」という結びつきが強いと思います。