新・ことば事情
5371「イカ徳利」
2月21日の読売テレビのお昼のニュースで、今生産が最盛期を迎えている、
「イカ徳利」
について伝えていました。その際に本野アナウンサーは、
「いかとっくり」
と「徳利」を「濁らずに」読んでいたのですが、私の語感と違うので「おや?」と思いました。私なら、
「いかどっくり」
と濁ります。これまでそのように読んできた気がします。
『NHK日本語発音クセント辞典』を引きましたが、この言葉は載っていません。
『三省堂国語辞典・第7版』を引きましたが、「いかすみ」「いかそうめん」は載っていましたが、「イカ徳利」は載っていませんでした。
『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『大辞林』には、いずれも、
「いかどっくり」
という「濁った形のみ」載っていました。
複合語の後部要素が「濁る」か「濁らない」かは、「その複合語の結びつき」が「強い」か「強くないか」で決まると思います。つまり「複合語」として熟成して「一語」と認められるようになって来たら「濁る」ようになる。これはアクセントでも、
「コンパウンド」
という形で現れます。
そして、「一語」と感じるかどうかは、
「その言葉をよく使うか、あまり使わないか」
によって変わりますから、かなり「属人的」な部分があります。
本野アナウンサーは、入社10年程になりますが、
「『イカ徳利』のニュースを読んだのは初めて。この言葉もきょう初めて知った」
と言っていました。現地の記者にも確認したそうですが、その時の聞き方が、
「これ、『イカトックリ』でいいんですよね?」
というような聞き方で、
「濁るか?濁らないか?」
については聞かなかったそうです。
おそらく、以前はよく使われて「濁っていた」ものが、あまり使われなくなってきた(つまり、言葉として伝わらなくなってきて)ことで、「濁らない」ようになってきているのが現状ではないか?と感じました。
(追記)
2月25日の朝日放送(ABC)のお昼のニュースでも、「今、生産がピークを迎えている」というニュースを放送していました。いわゆる「ひまネタ」と呼ばれる種類のニュースなので、「ストック」しておいて、事件や事故のニュースが少ない時に放送されるからですね。
ABCのニュースでも、「濁らない」、
「イカとっくり」
で放送していました。その商品が入った袋に、どう書いてあるか注目したら、
「徳利いか」
と漢字で書かれていて、しかも順番が逆で、私の期待には答えてくれませんでした・・・。
(2014、2、25)