新・読書日記 2014_021
『辞書になった男~ケンボー先生と山田先生』(佐々木健一、文藝春秋:2014、2、10)
著者はNHKのディレクター。去年この本の元となった作品『ケンボー先生と山田先生~辞書に人生を捧げた二人の男』を撮り、BSプレミアムで放送、「第30回ATP賞・最優秀賞」を受賞した。番組のその書籍化。
実は、その作品を私は見ていない。年末に再放送があったが、これも見逃がしてしまった・・・。著者の佐々木さんとは一度お会いしたことがある。以前、『みんなでニホンGO!』という番組を彼が作っていた時に、その番組のブレーンでもあった飯間浩明さんとのつながりで、居酒屋で会った。その後、彼は「ニホン語」の魅力に取りつかれたらしい。
本書にも飯間さんは頻繁に登場するし、その意味でも、とても親しみを持って読むことができた。
本書の内容は、同じ三省堂から出ている『三省堂国語辞典』(三国)と『新明解国語辞典』(新明解)。その編者は、「三国」が見坊豪紀(けんぼう・ひでとし)、「新明解」が山田忠雄。二人は東大の同級生であった。その二人が、最初は協力して辞書の編集をしていたのに、なぜ袂を分かつことになったのか?「1月9日」という日付に隠された謎は?用例に潜んでいる思いとは?ドキュメンタリー番組のように(って、元が「ドキュメンタリー番組」なんだから当たり前なのですが)丹念に関係者に話を聞き取りながら話が進む様子は、推理小説のようでもある。
「国語辞典なんて、どれでも同じでしょ?」
と思っている人には、ぜひ読んでほしい一冊。なんと人間臭いドラマが、辞書の中に潜んでいるか、辞書とは「人間」が作っているものであるということが感じ取れる一冊です。
これを読んだら、武藤康史さんの『明解物語』も読んでくださいね。(と書いてネット検索したら、今品切れらしい。古本だと結構高い。6000円以上の値も付いている。もともと定価が3400円(プラス税)と高かったし。図書館で捜してくださいね。)