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『道浦TIME』

新・読書日記 2014_018

『余生返上』(大谷晃一、ノア工房:2014、1、10)

 

「情けない男」の話である、「素晴らしい"夫の愛"」の話である。こんな夫婦は滅多にいない。貴重な記録である。「連理の比翼」という言葉、よくわかんないけど、こういうことか。(調べたら、白居易の「長恨歌」でしたか。)

大谷晃一先生、90歳。今から20年ほど前に『大阪学』という書物を出されたときに、初めて取材に行った。それ以降も何度か取材に伺った。最後にお邪魔したのは、今から13年前。はっきり覚えている。2001年の9月12日に、兵庫県伊丹市のお宅にお邪魔したのだ。そう、アメリカの同時多発テロ「9.11」の翌日だったのである。今は亡き奥様が、2階の書斎まで、お茶を持って来てくれた。暑い日だった。

その後、奥様が亡くなって、大谷先生は「老人ホーム」に入られた。毎年、年賀状を頂いていて、それは知っていた。老人ホームに入られた時に、「筆を措く」決意をされたようだが、奥様を亡くして、その心の空白を埋めるためにか、また筆を執った。この本は、大谷先生の自叙伝である。そしてご本人いわく、「最後の著作」だそうだ。奥様を失って、本当に魂が奪われたようになる大谷先生。しかし、「余生を返上」して書き上げた一冊である。心して読むべし。

(☆5つ)


star5

(2014、2、6読了)

2014年2月19日 10:15 | コメント (0)