新・ことば事情
5354「吉兆のアクセント」
「良い兆し」のことを「吉兆」と言います。NHKの「アクセント辞典」を引くと、
「キッ/チョー」
という「平板アクセント」しか載っていません。
「虹は吉兆だ」
という文章語あるとすれば、その場合は確かに「平板アクセント」で読みますが、同じ「吉兆」と書くものでも、関西では異なるアクセントで言うものがあります。
1月10日の「えべっさん(十日戎)」の際、戎神社で、笹に(有料で)つけてもらう
「吉兆」
は、「頭高クセント」で、
「キッ\チョー」
と言います。これまで我々は「頭高アクセント」で読んで(呼んで)来ました。
しかし、アクセント辞典には、この「頭高アクセント」の「キッ\チョー」は載っていないのです。「方言」という認識なのでしょうかね?
先日、横浜出身のYアナウンサーが、この「吉兆」を「平板アクセント」で下読みしていたので、
「アクセント辞典はそうかもしれないけど、関西では『頭高』だよ」
と指導して、本番では「頭高アクセント」で読ませました。
しかし、1月30日のABC(朝日放送)のお昼ニュースで、熊野速玉大社で「吉兆作り」がピークを迎えているという話題を伝えていましたが、その際は「吉兆」を、
「キッ/チョー」(ABC)
と「平板アクセント」でアナウンサーは読んでいました。
他社のアナウンサーにも聞いてみたところ、今宮戎神社の「福娘」の経験があるMBS(毎日放送)の古川圭子アナウンサーは、
「昭和のミス福娘としては、『頭高』の『キッ\チョー』しかありえません。っこの『吉兆』は、『縁起物の飾り』で、『よい兆し』とは別物と考えます。」
ときっぱり。一方、同じMBS(毎日放送)の柏木宏アナウンサーは、
「個人的には『平板』ですね。『頭高』はなんとなく大阪弁的な気がするのと、"ボソボソ呟き女将"のお店っぽいような気がするからですかねー。」
というご意見。たしかに、そんな気がしないでもありません。