新・読書日記 2014_001
『養老孟司特別講義 手入れという思想』(養老孟司、新潮文庫:2013、11、1)
養老先生の8つの講義録。単行本は2002年11月に白日社から『手入れ文化と日本』というタイトルで出ているもの。2014年の1冊目。大変勉強になりました。
「知る」ことなく、一度も自分が変わったことがない人が多くなっている。その根本にあるには「都市化」「情報化」だと。養老先生は、その流れに疑問を呈しています。疑問を呈しつつ、
「人間というのは、固まったもの、固定したもの、安定したものを非常に欲しがる。文明社会になると、なんだか知らないけれども、カチンカチンに固まったものを好むようになる」
と指摘しています。東大で教えていた頃に尋ねて来た学生が「オウム」の信者で、東大の、それも医学部の学生であるにもかかわらず、「空中浮遊」やら「水の中で何分も息を止めて死なないでいられる」ということに何の疑問も持っていない様子に、養老先生は驚き、
「これは時代が(人間が)変わってきているのだ」
と、危機感を抱いたそうです。
養老先生の話は、脳の話から文明の話、歴史の話へとつながっていきます。大変おもしろい、知的好奇心を刺激する本でした。
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