新・読書日記 2013_219
『上岡龍太郎話芸一代』(戸田学、青土社:2013、10、7第1刷・2013、11、15第3刷)
「芸は一流、人気は二流、ギャラは三流、恵まれない天才、上岡龍太郎です」
という語り口でおなじみの上岡龍太郎さん。
もう引退して十数年たつのだろうか?つい、この間の様に思えるのだが・・・その、上岡龍太郎さんの「話芸」の記録を収めた本を、放送作家の戸田さんがまとめた。
今思えば、上岡さんは60歳を前に引退した。(58歳)
本書を読むと、落語や歌舞伎などの演劇などの芸能には『型』がある。『型』があるものは受け継いで『伝統』ができる。しかし『一人の話芸』にはそういった『型』はない。一代限り。だから伝統にならない。一人語りの『話芸』に『型』を求めていろいろな試みに挑戦したのが上岡さん。しかし試行錯誤の結果に得たものは、一人語りの話芸は、「型」がないことがそのレーゾンデートルであり、もし「型」が出来てしまったら、それは、追い求めていたものではなくなってしまうという"矛盾"。それを悟って、上岡さんは引退したのではないか。タイトルの「話芸一代」にも、それは表れているような気がした。
なお本書は、このお値段(2310円)で、なんと上岡さんの漫談「ロミオトジュリエット」のCDが付いている。本と、実際の上岡さんの「しゃべくり」を楽しむ(勉強する)ことができる。
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