新・ことば事情
5297「鑫」
用語懇談会の出張で大分に行きました。大分空港から市内まではリムジンバスで1時間。その際、温泉で有名な「別府」を通るのですが、海岸沿いに「砂湯」の文字が!
「砂湯」と言えば鹿児島の「指宿」の専用かと思っていたら、あるんですね、別府にも。
その「別府海浜砂湯前」の向かい側、車窓から見えた「台湾料理店」の看板に目が留まりました。
そこには「金」が3つ「轟」や「蠢」みたいに「三角形」に構成された漢字と「成」で、
「鑫成」
と書かれていました。横に平仮名で、
「しんせい」
と書かれていたので、「金×3」の「鑫」という漢字を「しん」と読むことはわかりました。パソコンで手書き入力すると、出て来るんですね、この漢字!
『新潮日本語漢字辞典』で「しん」で引いてみたのですが・・・載っていない。そこで普通の漢和辞典みたいに「総画数」で引こうと。「金」が「8画」だから「かける3」で「24画」ですね!引いてみると・・・あった!
「鑫」
しかし、その読みは、
(1)キン (漢)コン(呉)【m】
(2)クン(漢)(呉)【n】
とありましたが、「シン」はありませんでした・・・なぜかな?
意味は、
「(1)キン=金が増える。中国で人名や商店の屋号に用いる。」
「(2)クン=碗(わん)。鉢」
だそうです。なるほど、「(1)キン」はお店の名前で使われるのだ。その通りですね。「(2)クン」だと「容器」の「碗」「鉢」ですか。食べ物屋さんに関係ありそうな感じですね。
一つ、新しい漢字を覚えましたが、なぜ「しん」と読むかは、謎として残りました。
(追記)
『新潮日本語漢字辞典』を書かれた、新潮社の小駒勝美さんからメールを頂きました。それによると、
『「鑫」(金三つ)を「シン」と読むのは中国音です。中国語辞典で「鑫」を引くと「xin」(一声)のピンインがついています。「xin」と読む字は「心」「新」などですから、まさしく「シン」です。「鑫」は中国語では「富み栄える。人名や屋号に用いることが多い」(『中日辞典』小学館)とあります。ほかにも中華料理店でこの字を使った店があります。webで見てみると、東京の目黒に「鑫隆楼」(シンロンロウ)近鉄日本橋に「鑫福」(シンフク・台湾料理)などがあり、いずれも「シン」と読んでいます。』
小駒さん、詳しい情報をありがとうございました!やはり中国料理のお店の名前では、よく使われている漢字だったのですね。しかし、普段はあまり目にしないし、読み方も難しい漢字ですね。まあ、書くのは「金」×3ですから、そんなに難しくはないのですが。
(2013、12、9)