新・ことば事情
5289「アリバイ」
某局のお昼のニュースで、「特定秘密保護法案」についての地方公聴会の様子を伝えていました。その中で女性記者が、
「地方で公聴会を開くのは、『丁寧な審議をした』というアリバイ作りのため」
というようなリポートをしていました。結構踏み込んだ(一方からの見方での)コメントだなあと思いましたが、それ以外になぜ気になったかと言うと、「アリバイ」の使い方を間違っていると思ったからです。「アリバイ」というのは、推理小説を読んだことがある人ならだれでも知っていると思いますが、
「現場不在証明」
ですね。つまり、
「その場に『いなかった』から、その出来事に『関わっていない』『無罪である』ことを証明する出来事」
が「アリバイ」です。
「一応やりました」
という形だけの証拠は、本来「アリバイ」とは言えないはずです。
『精選版日本国語大辞典』を引いてみると、1番目の意味では確かに正しい意味が載っていましたが、2番目に、
「一般に、自身にとって不利な事実を打ち消すために示す、もう一つの事実や理由」
とありました。『広辞苑』も2番目の意味で、
「口実。言い訳」
とあって、用例が、
「体制の欠陥を隠すアリバイ作り」
とありました。あ、これは今回にピッタリだ。辞書はもうすでに、派生したこういった意味を認めているのだなあ。ちょっと私は違和感がありますが。