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『道浦TIME』

新・読書日記 2013_151

『輝ける闇』(開高健、新潮文庫:1982、10、25初版・2005、7、10第27刷)

 

30年で27刷のロングセラー、さすが開高健。でも何冊か家にある「開高健」の本だが、ちゃんと読み通したものはなかった、今回、夏休みにベトナム(ホーチミン)へ行ったこと、そこで宿まったホテルが、たまたま昔、開高健が泊まったホテルだった。まあ、そういった事もあって、改めて読んでみようかなと言う気になった。2013読書日記141で書いた『開高健名言事典 漂えど沈まず~巨匠が愛した名句・警句・冗句200選』(滝田誠一郎、小学館:2013、6、3第1刷・2013、7、1第2刷)も、そういった流れで読んだ。そこに出て来た「水牛と蚊」の話、この『輝ける闇』に出て来た。この本は、読み始めて読み通すのに、1か月かかってしまいました。

開高の印象的な表現、これはすごい「畳み掛け」だった。

「或る哲学者の悲痛な饒舌に私は従いたい。人びとは資格も知識も徳もない輩によって、きびしく監視され、検査され、スパイされ、指揮され、法律をつくられ、規制され、枠にはめられ、教育され、説教され、吟味され、評価され、判定され、難詰され、断罪された。取引きや売買、物価変動のたびに、書取られ、登録され、調査され、料金をきめられ、捺印され、測定され、税の査定をされ、賦課され、免許され、認可され、許可され、但書をつけられ、説諭され、邪魔され、改善させられ、矯正させられ、訂正された、公共の福祉という口実、全体の利益の名において、利用され、訓練され、強奪され、搾取され、独占され、着服され、税を絞られ、だまされ、盗まれ、そして反抗の兆しでも見せたり、少しでも嘆こうものなら、抑圧され、改心させられ、蔑視され、怒られ、追いつめられ、こづかれ、殴り倒され、武器をとりあげられ、縛られ、投獄され、銃殺され、機関銃で掃射され、裁かれ、罪を宣告され、流刑にされ、生贄とされ、売られ、裏切られ、なおそのうえにもてあそばれ、冷笑され、侮辱され、名誉を汚されたのだった。」

圧倒的なことばの機関銃は、「独裁の暴政と虐殺」に対して向けられたものである。

(コブクロの「永遠にともに」を思い出した。あれは全く逆の「めでたいパターン」ではあったが。)


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(2013、9、14読了)

2013年9月16日 11:40 | コメント (0)