新・ことば事情
5216「派手と艶」
<2007年9月3日に書きかけました。その時は「平成ことば事情3052」>
2007年9月2日の日経新聞「私の履歴書」は文楽人形遣いの吉田蓑助さんです。その文中に、文楽の題の一つ、
「艶姿女舞衣」
というのが出てきました。漢字ばかりのこのタイトルには、ルビが振ってあって、それには、
「はですがた おんなまいぎぬ」
とあったのです。私はてっきり「艶姿」は、
「あですがた」
だと思っていたのですが、ルビは、
「はですがた」
でした。それを見て「あ、もしや?」と思ったのは、
「『あで』と『はで』は同じ語源か、何らかの関連があるのではないか?」
ということです。「あで」は、「はで」の頭の「H」の子音が取れただけですからね。
(ということでほったらかしになったままで、6年後の2013年8月23日に続きを書いています。)
特に新たな発見はありませんでした・・・というか、ほったらかしでしたから。
『精選版日本国語大辞典』で「はで」を引くと、
「派手・破手・端手」=(三味線の弾き方の「はで(破手)」から転じた語とも、また、「映(は)え手」の変化した語とも言う)姿、かたち、つくり、色あい、図柄などが、見た目にきわめて華美に映ること。目立って、はなやかであること。また、そのさま。」
とありました。
一方「あで」は、「艶(あで)やか」で引くと、
「あでやか」=(「あてやか(貴――)」の変化した語)女性の用紙、態度が、上品で美しい様。また、はなやかでなまめかしいさま」
とありました。直接のつながりは、語源としてはなさそうですが、意味に共通点があることから「当て字」として使われることが、歌舞伎や文楽などの世界ではある、ということようですね。