新・ことば事情
5199「三千世界の『三千』」
『数ことば連想読本~語彙表現のたのしみ』(槇皓志、現代教養文庫)という本を読んでいたら、
「『三千世界』の『三千』は『3000』ではなく『1000の3乗』、つまり『10億』である」
という記述が出て来ました。へえー!知らなかった!
仏教用語関連でよく目にする「三千」。
「京都大原三千院」とか「白髪三千丈」とか、
「三千世界の鴉(カラス)を殺し ぬしと朝寝がしてみたい」
というのは「都都逸」でしたっけ?(前にこれ、書いたな。平成ことば事情1642「三千世界」。落語「三枚起請」の中で出て来た。高杉晋作が作った都都逸だそうです。)
「三千」=「3000」ではなく、
「数えきれないぐらいたくさん」
という意味であるとは感じていましたが、まさか、「千の三乗」だとは知りませんでした。
「1000」=「10の3乗」
ですから、「1000の3乗」は、「『10の3乗』の3乗」で「10の9乗」=「ゼロが9つ」ですから、
「1000000000」
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん・・・十億!ですね。
ふーん。
で、その前に書いた平成ことば事情1642「三千世界」を読み返してみたら、『新明解国語辞典』を引いて出ていた「三千大世界」の説明を、
「(仏教で)須弥山(シュミセン)を中心とする世界(=一小世界)を千倍し、また千倍し、さらに千倍したほどの大きな世界。三千世界。(広い世界の意にも用いられる)」
と引用して、
「この場合の『三千』というのは『1000が3回』ではなくて『1000の3乗』、つまり、「1000×1000×1000=10の9乗=1000000000=10億」
ということなのですね。」
と書いてあるではないですか!!2004年3月に書いたのに、もう忘れています!
・・・俺の脳細胞は「三千」はないなあ・・・きっと。
ちなみに、英語で言うと「10億」は、
「billion(ビリオン)」
これは「million(ミリオン)」の1000倍ですね。英和辞典を引くと、なんと「アメリカ英語(米語)」では確かにその通りなのですが、「イギリス英語」だと「billion(ビリオン)」は、
「1兆」
だと記されているではありませんか!「10億」の1000倍です!
数字の単位でイギリスとアメリカで基準が違うと(同じ言葉の表す数が異なると)、とってもややこしいいですよねえ?
そういえば、昔は「億万長者」を、
「ミリオネア」
と言っていましたが、今や、
「ビリオネア」
ですもんねえ。まあ、どちらも「たくさん」を表しているわけです。
「100万ドルの夜景」が「1000万ドルの夜景」になったような。あれは変動相場制では気が気じゃないでしょうねえ。