先月(7月)に、ニコニコ動画で生放送した「道浦俊彦ことばのことばかり」。相棒の山ちゃんこと山本隆弥アナウンサーが、4回目にして本領を発揮して来ました。
話の流れで、
「ロゼッタストーン」
の話が出たのですが、それを聞いた山本アナウンサ-、
「ロゼッタ・・・・ストーン?」
と、どうやら「ロゼッタストーン」を知らない様子なのです。
念のために「ロゼッタストーン」の説明を辞書(「精選版日本国語大辞典」)から引いておくと、
「(英 Rosetta stone)エジプトのナイル川河口の都市ロゼッタ(ラシード)で発見された石碑。一部欠けている。黒色玄武岩で高さ1,2メートル、幅75センチメートル。紀元前196年建立のプトレマイオス5世の頌徳碑で、聖刻文字(ヒエログリフ)・民衆文字(デモクラティック)・ギリシア文字が三段に刻まれている。シャンポリオンによって解読され、以後のエジプト表象文字解読の手掛かりとなった。1799年ナポレオンの遠征軍が発見。大英博物館所蔵。」
とあります。私もロンドンの大英博物館で実物を見たときに、
「意外と小さいんだな」
と思ったことを覚えています。もう21年前ですが。
「ことばのことばかり」の現場にいたスタッフは、皆40代以上で、全員「ロゼッタストーン」を知っていたので、ずっこけて、
「そんなことも知らんのかあ!」
と山本アナに突っ込んでしまいました。ここで、意地悪心がもたげて来て、
「じゃあ、君が想像する『ロゼッタストーン』の絵を描いてみて」
と山本アナに言うと、「えええ・・・」と言いながら描きました・・・それは・・・なんと、高さ7~8メートル、幅3メートルはありそうな、
「慰霊碑のような巨大な墓石」
の絵でした。みんな、ドカーンと受けた受けた!
それ以来、彼のニックネームは、
「ロゼッタストーン」
になりました。
翌日・・・山本アナウンサーが近付いてきて、
「きのう、家に帰ってから、家に電話して母に聞いてみたけど『知らない』って言うんです。あと、大学の時の友達3人にも聞いてみたんですけど、誰も『ロゼッタストーン』を知らなかったんです。」
さらに、その後、番組で出会ったお笑い芸人さんにも何人か聞いてみたそうですが、誰も「ロゼッタスットーン」を知らなかったそうです。
わたしも、読売テレビのアナウンス部で聞いてみたところ、
「35歳以上の人は知っていたが、それより若い人は知らない」
という結果が出ました。中には若い女性アナウンサーが、
「『ロゼッタストーン』って、聞いたことはありますが・・・英語の教材か何かですよね?」
と言うではありませんか!
たしかにインターネットで「ロゼッタストーン」を引くと、そういう名前の
「英語教材」
が出て来ます。でも、それは本物の「ロゼッタストーン」がヒエログリフ解読に役立ったという事実に基づいて名付けたんでしょうけど・・・
「この花(バラ)の香り、石鹸の匂いと似ている!」
と言った子供がいましたが、それは本来、
「花(バラ)の香りを付けた石鹸の匂い」
なのですよね。それと同じで、まさに、
「本末転倒」
と言うべき事象でしょう。
しかし、こうなってくると、もうこれは山本アナウンサー個人の責任ではなくて、
「教育システムに問題があるのではないか?つまり、社会科で『ロゼッターストーン』を教えていないのではないか?」
あるいは、
「高校の世界史でのみ教えていて、それを選択しなかった人は、知らないまま卒業しているのではないか?」
といった疑問が出て来ました。
家に帰って、高校1年の息子に、
「『ロゼッタストーン』って知ってるか?」
と聞くと、
「知ってるよ。石が円のように並んでるヤツやろ」
と言うではありませんか・・・・って、
「それは、『ストーンヘンジ』(環状列石)やろが!」
「あ、違った、あのナポレオンが遠征でエジプトで見つけた石碑で、3種類の言葉が書かれていて、古い文字の解読に役に立った奴やろ」
「お、正解!今、それはどこにある?」
「大英博物館」
「正解!それって教科書に載ってるの?」
「載ってないよ」
「じゃあ、なんで知ってるの?」
「副読本に、たしか載ってたと思う。」
ということでした。
年齢だけの問題ではないが、やはり教育の様子が変わって来ているのではないかなと感じました。そんな折、『こんなに変わった歴史教科書』(山本博文ほか、新潮文庫)という本を読みました。「ロゼッタストーン」については記されていませんでしたが、我々の頃(昭和の時代)の教科書と、平成の教科書では、かなり様相が違っているのは確かのようです。
(2013、8、21)