新・ことば事情
5175「事件と事故2」
平成ことば事情2885で「事件と事故」について書きました。
その後、2012年に、京都・祇園と亀岡市で、車による死亡案件があり、その際にも、
「事件か?事故か?」
という判断で、放送各社は悩みました。最初は「事件」か「事故」か、わからないことが多いのです。「ひき逃げ」も、「ひいた」時点では「事故」でも、「逃げた」時点で「事件」になります。
2012年9月に名古屋で開かれた用語懇談会放送分科会で、関西テレビの委員から、
「京都府亀岡市で通学中の小学生の列に車が突っ込んで3人が亡くなったのは『事故』でしょうか?『事件』でしょうか?各社の対応をお聞かせ下さい。」
という質問が出ました。ちなみに「関西テレビ」では、当初「事故」としていましたが、社会への影響や結果の重大性から「事件」に切り替えたとのことでした。
各社の対応は、以下のようなものでした。
【毎日放送】「祇園」のケースは最初「事故」。人をはねてからもアクセルを踏んでいたことがわかって「事件」に変えたが、「病気だったのでは?」という話が出た時点で、また「事故」に戻した。「亀岡」は予断を入れずに「事故」。
【テレビ東京】「故意」でなければ「事故」。ひき逃げは故意なので「事件」。クレーンの横転などは「事故」。
【関西テレビ】ワイドショーでは「事故」でも「この"事件"は~」と言うことがある。
【日本テレビ】明確な定義はないが、裁判になったら「事件」ということも。「亀岡」は「事故」。7月の初公判では一部「事件」と言ったところも。
【フジテレビ】明確な線引きはない。「ひき逃げ」は「事件」。今回「無免許」で結果重大なので(FNNは)「事件」。(関西テレビと同じ。)
【朝日放送】「亀岡」は、地元警察が加害者に対して「被害者情報」を流してしまったりしたミスもあって、地元の被害者感情を考慮して「事故」と出稿しにくい雰囲気があったのではないか?朝日放送では「事件」と言い続けている。
【NHK】「亀岡」は「事故」。
とのことでした。
そして先日、マイケル・ジャクソンさんが2009年に死亡した案件について、
「事件」
としてよいのか?という質問を受けました。この件については、マイケルさんの主治医に対して、
「過失致死で禁錮4年の判決」
が出ています。改めて辞書を引いてみたところ、
「事件」は、いわゆる「広義」にはこういった案件にも使えそうだということ、また「事件か事故か」という区別については「狭義」でいうところの、
「『訴訟事件』の略称」
として使用するものに使うような気がしました。