新・ことば事情
5165「二君」
坂口安吾の『堕落論』を読んでいたら、
「二君に仕える」
という言葉が出てきましたが、その「二君」に、
「じくん」
とルビが振ってありました。
え?「にくん」じゃないの?と思って辞書を引くと、しっかり、
「じくん(二君)」
とありました。知らなかった!
坂口安吾は、48歳で亡くなっていました。もうとっくにその年齢を越えてしまいましたが・・・写真を見ると、老けてるなあ、昔の人は。
(追記)
実は、これを書いたのが『堕落論』をまだ読んでいる途中だったのですが(あんなに短いのに)、最後まで読むと、また似たような言葉が出てきました。最初の「二君」の文脈は、
「仇敵なるゆえに一そう肝胆相照らし、たちまち二君に仕えたがるし、昨日の敵にも仕えたがる」
で、似たようなものが出て来たのは、
「女心は変わりやすいから『節婦(せっぷ)は二夫(じふ)に見(まみ)えず)』という、禁止自体は非人間的、反人性的であるけれども」
という中の、
「二夫(じふ)」
で、ともに「二」と書いて「じ」と読むところが共通しています。
(2013、7、10)