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『道浦TIME』

新・ことば事情

5198「ラスとチャンス」

 

夜勤帰りのタクシーの中で、助手席の前の上の方に、「ラジオの文字放送ニュース」の字幕が流れていました。「見えるラジオ」ですね。情報提供はFM大阪さんのようです。

その中に、10人の知事が集まった会議で、

「少子化対策は今がラストチャンス」

という認識を共有したというニュースが。

しかしよく見ると「ラストチャンス」とすべきところが、

「ラスとチャンス」

になっていました・・・・。おそらく「変換ミス」ですねえ・・・。

「ラス」と「チャンス」・・・「トム」と「ジェリー」みたいな・・・古いか。

"ありがちな間違い"なので、他山の石にしたいと思います。

(2013、7、29)

2013年7月31日 11:18 | コメント (0)

新・ことば事情

5197「こけし」

 

テレビの業界用語、だと思いますが、「ミヤネ屋」では使われている言葉に、

「こけし」

があります。テレビ朝日などでも働いたことがあるスタッフに聞いたら、

「『こけし』と言います」

と言っていたので、情報系の番組では使う言葉なのでしょう。どんなものかと言うと、イラストなどで、メーンに出ている人以外の「その他大勢の群衆」を示す場合や、本人の映像がない場合、あるいは本人の映像を出せない場合に、

「人の輪郭だけを表した、赤や青などの単色で塗られた『こけし』の形をした人型」

のことです。

以前、新入りのAD(アシスタントディレクター)に対して、ディレクターがイラストの発注を頼んだ時に、

「真ん中に、沢尻エリカのイラスト。周りに10人分ぐらい『こけし』ね」

と言ったところ、仕上がって来たイラストを見たら、真ん中に沢尻エリカが、そしてその周辺には、

「本物の10体ほどの『こけし』が並んだシュールなフリップ」

が仕上がってきたということがありました・・・。「こけし」違いでした。

(2013、7、28)

2013年7月30日 21:16 | コメント (0)

新・ことば事情

5196「試合が再開しています」

 

サッカー東アジアカップの男子韓国戦。1対1で迎えた後半開始まもなく。ファールで中断された試合が再び始まった時にフジテレビ・西岡アナウンサーが、

「すでに試合が再開しています」

と言いましたが、これは間違い。正しくは「受け身形」で、

「試合が再開されています」

というべきところです。もし「受け身形」を使わないのであれば、「助詞」を変えて、

「すでに試合を再開しています」

とすべきです。

最近このような「受け身形」を間違った(もしくは「助詞」を間違った)例をよく耳にし、目にします。

原因は、「受け身形」にもかかわらず、その「語尾を省略する」テロップにあると、私は考えます。この場合だと、

「試合が再開」

というようなテロップです。これをそのまま読んで、

「試合が再開しました」

となって違和感を覚えないところに問題があります。

「ミヤネ屋」では、見つけたらいちいち「モグラたたき」のように直してはいるのですが、「イタチごっこ」で、なかなか直りません。"時代の趨勢"と受け入れなければいけないのでしょうか?

しかし、柿谷は頑張ったな。

(2013、7、28)

2013年7月30日 16:14 | コメント (0)

新・ことば事情

5195「一戸から八戸」

 

岩手と青森の「数字に関する地名」を調べました。

具体的に言う戸・・・いや、言うと、「八戸」のように、

「数字+戸」

という地名に関してです。一般的には(地元でない人には)知られている地名と言うと、やはり「八戸」であり、せいぜい「五戸」ではないでしょうか?地元の方ごめんなさい。そこで、これはいくつまであるのかを調べてみたいなと思ったわけです。

さっそく結果発表!

【岩手】一戸町(二戸郡)

    二戸市

【青森】三戸町(三戸郡)

    五戸町(三戸郡)

    六戸町(上北郡)

    七戸町(上北郡)

八戸市

あれ?

これを見て、皆さんそう思いませんか?・・・そう、

「四と九」

の付く地名がないのです。なぜ?すぐに思いつくのは、

「忌み言葉」

ですよね。

「四=死」「九=苦」につながるので避けたのではないか?

ということですね。たぶん、そうなんじゃないかな。

それと、「一戸」と「二戸」は「岩手県」だったんだ!全部「青森県」かと思っていました。・・・あ、そうか、「県」ではないんだね、これは、

「南部藩の地名」

なんだね。あとから「県」で分けてしまったから「一」と「二」だけ岩手になったのね、きっと。今の都道府県の分け方になった100年以上たつだろうけど、いまだに江戸時代の名残があるんですね・・・。

また「一戸町」は「二戸郡」、「三戸町」は「五戸郡」というのも「数え歌」の次への受け渡しのような、よく分からない感じなのですが。どうなんでしょうか?

「地名」というものは「歴史」を含んでいますね。

 

 

(訂正・追記)

NHKの原田邦博さんからメールを頂きました。

「『九戸村』は岩手県に実在します。『一戸町』『二戸市』の東側です。『四戸』は地名にはありません。」

とのこと。改めて地図を見直してみると。・・・あ、あった!確かに「九戸()」の文字が!九戸村の皆さん、失礼しました。お詫びして訂正いたします。

追加します。

でも、やはり「四戸」はないんだなあ。「十和田湖」も「十二湖」も「十三湖」も青森にはあるのに。

(2013、7、30)

 

(2013、7、28)

2013年7月30日 10:13 | コメント (0)

新・ことば事情

5194「ハンサムな生き方」

 

「男前」

という言葉を、男性だけでなく「女性」に対する褒め言葉でも使うという最近の傾向については、以前書きました。(平成ことば事情3146「男前」)5年前のことです。

今回は、

「ハンサムな」

女性に使った例を見つけました。通勤で載っている京阪電車で目にした中吊り広告。今(7月13日から9月1日まで)、京都歴史博物館で開かれている、NHK大河ドラマの主人公「新島八重」についての展示会「八重の桜展」の広告です。そこに、こんな文言が。

 

「襄が愛した、彼女のハンサムな生き方。」

 

明らかに女性に対して「ハンサムな生き方」と「ハンサム」を使っています。それも「見た目」の「ハンサム」ではなく「生き方」を「ハンサム」としています。これは、

「男前な生き方」

と置き換えられますので、「男前」と同じ用法ですね。

グーグル検索では(7月28日)、

「ハンサムな生き方」=11万2000件

もありました。そのなかにすでにこの「ハンサムな生き方」という言葉に関する考察がありました。石岡シオンさんという方のサイトで、それによると、

「夫である同志社大学の創設者新島襄は、自分の妻のことを、アメリカの母と慕うハーディー夫人に紹介する時に、『八重は決して美人ではないが、その生き方がハンサムです。』と手紙に書いたことから、八重は『ハンサム・ウーマン』と呼ばれるようになったと言われています。このハンサムな生き方が一般化したのは、2009年4月の『歴史秘話ヒストリア』がきっかけと言われています。」

そうだったのか!「ハンサム・ウーマン」と夫から言われて、もうずっと昔に定着していたのか!

「ハンサムウーマン」=21万1000件

うーむ、これで私が大河ドラマを見ていないことが、バレましたね。

(2013、7、28)

2013年7月29日 22:12 | コメント (0)

新・ことば事情

5193「LINE」

 

広島・呉市での16歳の少年少女たちによる事件で使われたというLINE」。

私は使っていませんが、若者を中心にとても使われているそうです。まったく同年代の、我が家の高1の息子にも聞いてみたところ、「使っている」ということでした。知らんかった!

この「LINE」をどのように表現するか?「ミヤネ屋」では、

「無料通信アプリ『LINE』」

と表現していますが、各メディアはどうか?7月25日の朝刊では、

見出し)  (本文)

(読売)LINE  スマートフォン向け無料通話アプリ「LINE(ライン)」

(毎日)LINE  無料通信アプリ「LINE(ライン)」

(日経)LINE  無料通信アプリ「LINE(ライン)」

また、『週刊文春』(8月1日葉月特大号)の記事では、「ミヤネ屋」や、毎日新聞・日経新聞と同じ、

「無料通信アプリ『LINE』」

でしたが、記事の説明では、

「LINEは主にスマホ用に開発された『インスタントメッセンジャー(IM)』と呼ばれるアプリ」

と説明されていました。

 

 

(追記)

7月30日の毎日新聞の電子版では、

「スマートフォン用アプリ『LINE(ライン)』」

となっていました。

(2013、7、31)

 

(2013、7、28)

2013年7月29日 16:11 | コメント (0)

新・ことば事情

5192「タパス」

 

行きつけの大阪・京橋のスペイン・バルに立ち寄った時のこと。

カウンターの前に美味しそうな一品料理が並んでします。いわゆる、

「タパス」

と呼ばれるものです。その中の一品を注文した時に、お店のマスターが言った一言に、ハッとしました。

「単数形では『タパ』なんですけどね。複数形だから『タパス』」

そうか!もしかしたらあのプラスティック製の密閉容器、

「タッパー(ウェア)」(特定商品名)

って、「タパス」の「タパ」から来ているのではないか?

ということです。そのスペイン・バルのマスターは、

「『タパ』は『ふた』の意味ですけど・・そうなんですかねえ・・・?」

と懐疑的でしたが、私は、

「きっとそうだ!」

と思った次第です。

ちなみに今年は、日本で「タッパー」が販売されてから、なんと50周年の年に当たるそうです。1963年にアメリカから上陸したのかあ。我が家は、私が物心ついたころから、タッパーを使っていました。当時は高かったのですね、今見ると。ウィキペディアでは、

「大卒の初任給が15000円程度の当時、直径17cmのボウル6個セットが1360円と高価で、価格面でも高級感が演出された。」

とあります。当時、うちの父(1958年・大卒)の初任給(メーカー)が、1万3500円だったと聞いたことがありますから、やはりそのぐらいの物価だったのでしょう。

また、「日本タッパーウェア」のサイトによると、

「そのネーミングは容器の開発者であるアメリカ人、アール・S・タッパーに由来しています」

え?開発者が「タッパーさん」だったの!?そこからのネーミングか。

残念ながら「タパス」と「タッパー」は、結びつきませんでした・・・。

でも「タッパー」という名前の意味は「ふた」から来ているのでは?(とあきらめが悪い。)

(2013、7、28)

2013年7月29日 10:10 | コメント (0)

新・ことば事情

5191「ホットが辛い」

 

お昼に会社の食堂で、カレーを食べました。

「辛いカレー」を口に入れた後に、「冷たいお茶」を飲みました。これが、

「熱いお茶」

だと、「余計に辛さがひどくなる」ような気がします。

そこでハッと気付きました。

辛いカレーを食べた後に「熱いお茶」を飲むのと「冷たいお茶」を飲むのでは、「辛さ」が違う。もしかしたら、

「舌の『熱い』と感じる点と、『辛い』と感じる点は、『同じ』なのではないか?」

舌の部位によって甘い、苦い、辛いなどを感じる部分が決まっていると何かの本で読んだ覚えがありますから、「熱さ」と「辛さ」を感じる場所が「同じ場所」でも、不思議はないのではないでしょうか?ぼら、英語では「辛い」を、

「HOT」

と言うではありませんか!「HOT」は「熱い」「暑い」でしょ、ということはやはり、

「熱い=辛い」

なのでは?と思いながら、カレーを口に運んでいたのでした。

(2013、7、26)

2013年7月28日 19:28 | コメント (0)

新・読書日記 2013_126

『好景気だからあなたはクビになる!~知られざるリストラの新基準』(中沢光昭、扶桑社新書:2013、6、1)

思わずドキッ!として手に取ってしまうタイトル。

著者は、会社のリストラを担当する経営コンサルタント。「こういうふうにリストラをすればいい」という会社への提案のみならず、「実際にその社員を相手にリストラを宣告する仕事」もしているという、ハードな経験を持っている"動くコンサルタント"。

本来「リストラ」は「クビ切り」と同義ではない。しかし「再構築(リストラクチャリング)」の中に「クビ切り」も含まれるのはじじつで、 日本では「リストラ」=「クビ切り」というイメージが付いてしまっている。

しかし、実は「早期退職」という形での人員整理には、思った以上に金がかかる。長期的には費用の削減ができ、再構築に資するわけだが、短期的にはかなりの費用がかかるので、「その費用があるうちに身軽になろう」とするのが「企業」である、というようなお話しでした。


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(2013、7、20読了)

2013年7月28日 12:10 | コメント (0)

新・読書日記 2013_125

『僕たちのヒーローはみんな在日だった』(朴一、講談社:2011、5、23第1刷・2011、6、29第2刷)

 

タイトルを見て、「ええ?ホンマ?そんなこと、ないやろ」と、ちょっと思ってしまった時点で、すでに著者の勝ち。

読売テレビの「関西情報ネットten.」にもご出演頂いている朴一さんの著書。2年前に買って、ようやく読みました。

芸能界やスポーツ界には在日の人が多いということは、特に目新しい話ではなかったが、松田優作は知らなかった。

それとこの本では、「力道山」の未亡人にインタビューした話が載っているのが"キモ"か。時代も感じるし、いろいろな歴史があったことが感じられた。


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(2013、7、15読了)

2013年7月27日 12:09 | コメント (0)

新・ことば事情

5190「粘投」

「粘投(ねんとう)」

という言葉を、新聞のスポーツ欄の野球の記事で見かけたのですが、

「果たしてこの言葉は、辞書に載っているだろうか?」

と思いました。

早速引いてみると、案の定、『精選版日本国語大辞典』『明鏡国語辞典』『デジタル大辞泉』『新明解国語辞典』『岩波国語辞典』『新潮現代国語辞典』『新選国語辞典』には「粘投」は、載っていませんでした。

しかし!なんと、『広辞苑』に載っていました!

「粘投」=野球で、投手が再三のピンチをしのぎながら投球すること。

 やるなあ、『広辞苑』!

そして『三省堂国語辞典』も、載せていました。

「粘投」=(野球で)投手がねばり強く投げぬくこと。

さすが「三国」!

グーグル検索では(7月25日)、

「粘投」=26万1000件

でした。用例としては、

「内海粘投7回3失点で今季7勝目」(7月25日「日刊スポーツ」ウェブ記事)

「岩隈、粘投で早くも9勝目『勢いづく1勝』」(7月21日「サンケイスポーツ」ウェブ記事)

「井川 99球粘投報われず 楽天戦は14回2/3無失点継続中」(7月16日「スポー二値」ウェブ記事)

と、これは「見出し」のみで使われていますが、

「粘投の弘前・平川「次は東京六大学リーグ目標」(7月25日「朝日新聞」高校野球サイト)

という見出しの、本記の記事を読むと、

「青森大会の決勝で粘投する弘前の平川航希投手を見ながら、ふと、あの名作漫画を思い出した。」

と本文の中でも「粘投」が出てきました。しかし、やはり「粘投」は「見出し」的な言葉なので、話し言葉で言うと、

「粘りのピッチング」

ですよね?グーグル検索では(7月25日)

「粘りのピッチング」=65万2000件

でした。

(2013、7、25)

2013年7月26日 17:50 | コメント (0)

新・ことば事情

5189「地滑りと崖崩れ」

 

2013年4月23日、静岡県浜松市の山の中の茶畑で大規模な「地滑り」が起こりました。これについて「ミヤネ屋」で報じた際、気象予報士の蓬莱大介さんがこう言いました。

「『地滑り』は前兆がある。急に起こるのが『崖崩れ』」

そうだったのか!

蓬莱さんによると、「地滑りの前兆」とは、

(1)  地盤に亀裂やふくらみがある。

(2)  井戸水や湧水に変化がある。

ということだそうです。これに対して「崖崩れ」には前兆がないと。

いずれも起きると大変ですが、前兆あるほうが、まだ対応はできますね。

参考にします!

一応辞書(『精選版日本国語大辞典』)を引くと、

「地滑り」=(1)斜面上の土地の表層部がある面に沿ってしだいにすべり移動する現象。長雨や雪解けのときのように多量に地下水を含んだ軟弱な地層に起こりやすい。地学では、一日センチメートル単位で移動するものをさし、それよりゆるやかな震引(ないびき)や、急激な山くずれ、崖くずれと区別している。

「崖崩れ」=急傾斜地の地表の岩石、土砂が、豪雨、地震などによってくずれ落ちること。また、そのもの。

とありました。

(2013、7、22)

2013年7月26日 11:16 | コメント (0)

新・ことば事情

5188「腹部を足蹴りして」

 

お昼のニュースの下読みをしていたWアナウンサーが、「おや?」という顔をしています。「どうしたの? 」と尋ねると、

「『腹部を足蹴りして』って原稿に書いてあるんですけど、『腹部を蹴って』ではダメですかね?」

「ああ、それは『腹部を蹴って』が正しいよ。『足蹴(あしげ)にする』という表現はあるけど、『足蹴(あしげ)りする』とは言わないしね。それに『蹴る』のは『足』に決まっている。『手で蹴る』『頭で蹴る』とは言わないもんね。『腹部を蹴って』でいいと思います』

と答えてデスクに原稿を直してもらいました。

もしかしたら「足で蹴って」は「強調表現」なのかもしれませんが、褒められた表現ではありませんね。

(2013、7、24)

2013年7月25日 21:54 | コメント (0)

新・ことば事情

5187「しずちゃんとすぎちゃん」

 

「ミヤネ屋」のアシスタントプロデューサー・Mさんが、タクシーチケットを切って下さいと依頼に来ました。専門家の先生のタクシーチケットのようです。

「この人は何の話題で来るの?」

と聞いたら、

「すぎちゃんの・・・」

「え?"すぎちゃん"?きょう何か、すぎちゃんのネタってあったっけ?」

「あ、間違えました、"しずちゃん"のトレーナーさんが亡くなった病気の専門家の先生です」

「ああ、メラノーマの」

と納得したものの、ちょっとおかしかったです。

なぜ「すぎちゃん」と「しずちゃん」を間違えたのでしょうか?考えてみましょう。

(1)「ちゃん」が同じ。

(2)「ちゃん」の前が共に「2文字」。

(3)「すぎ」と「しず」、「最初の1文字」が共に「サ行」。

(4)「2文字目」の「ぎ」「ず」が、共に「濁音」。

(5)「す\ぎちゃん」「し\ずちゃん」共にアクセントパターンが「頭高アクセント」で同じ。

ま、ざっと考えて、このような共通点がありました。それと、おそらくですが、Mさんにとっては、「しずちゃん」よりは「すぎちゃん」のほうが親しみがあるというか、使用頻度が高いのではないか?という推測もできます。

このくらい共通点があると、つい間違っちゃうんだろうなあ。

(2013、7、24)

2013年7月25日 16:51 | コメント (0)

新・ことば事情

5186「『いろはにほへと』のアクセント」

 

「いろはにほへと」

と書かれた木簡が見つかったニュースを、6月下旬の読売テレビの夕方の関西ローカルニュースで伝えていました。そのアクセントを、関西出身の女性アナウンサーは、

「イ\ロハニホヘト」

と「頭高アクセント」で読みました。これに違和感が。普通は、

「イ/ロ\ハニホヘト」 

ではないのか?あれ?でも「いろは」は、

「イ/ロ\ハ」(中高)

と、もう一つ、「物事の・・・」という場合は、

「イ\ロハ」(頭高)

いうアクセントもあるのではないか?と思い、ちょうど用語懇談会の放送分科会が、翌日日に開かれたので、各社の委員の皆さんに、

(A)「イ\ロハニホヘト」  (B)「イ/ロ\ハニホヘト」

アクセントはどちらでしょうか?と聞いてみました。すると、回答は全社、

(B)「イ/ロ\ハニホヘト」

でした。そして、

「(A)は関西なまりのアクセントでしょう」

という答えが返ってきました。やっぱり、そうだったのか!

(2013、7、24)

2013年7月25日 10:25 | コメント (0)

新・読書日記 2013_124

『アナウンサーの日本語論』(松平定知、毎日新聞社:2013、5、30)

 

あの「殿」こと「マ\ツダイラ」(×マ/ツダ\イラ)アナウンサーの著書。心して読むように。

アナウンサーとしての自分史を書こうと書き溜めていたメモを、「ぜひ!」と出版社の人に言われて「語りおろし」ふうに、編集者がまとめてくれたと。でも「語りおろし」の分、"松平さんらしさ"が良く出ている一冊だと思う。私もこういった本を書きたいと思うのだが、あれもこれもとなると、どうしても散漫になってしまう。とにかく幅が広いので、どれかに絞った方がいいなあという感じがする。「アナウンサーは、浅く広く知識を持っていなければならない。そのなかに一つ、専門の深い知識を持て」と入社したころよく言われたが、それをそのまま書くと、散漫になっちゃうんだよなあ。

44年のアナウンサー生活(今も現役!)の中で、この本を読む限りで、一番松平さんが力を入れたのは、以外にも実は「藤沢周平の朗読」であるような気がする。

目次を見ると、第1章「日本語で伝える技術」、第2章「私の朗読術」、第3章「テレビとともに生きて」、第4章「現代日本語論」、第5章「放送と日本語の歴史。に分けられている。本をオシリから逆に見ていくと4・5章はさらっと読んで、第3章は松平さんならではのエピソード、第2章が"キモ"の「朗読」、第1章は、アナウンサーはみんな読むべし、といった感じか。「歌うな、語れ」「意味の塊で読む」というのは、よーくわかる。共感。というより、普段から私も同じことを言っています。それと日航機墜落事故の時に、日航社長のおわび会見が生中継で入るという時に、それまで乗客名簿を読み上げていたアナウンサーが「いったん社長会見を・・・」と言った際、「いや、乗客名簿を続けてください。JALの社長の釈明会見より、いま、視聴者が求めているニュースは、乗客名簿でしょう」と言った木村太郎さんの咄嗟の仕切りに感銘を受けたと、松平さんは書いてあるのですが、私も28年前の当日、航機墜落のニュースを入社2年目で伝えていました。(たまたまその日が夜勤だったのですが、よく、やらせてくれたよなあ)その際に、先輩アナウンサーが伊丹空港から乗客名簿(520人分)を読み上げていて、100人ほど読み上げたところで「まだ続けますか?」と聞いてきたことがありました。何も絵変わりしない「テレビ的でない状況」に気付いたその先輩アナが、「テレビ的な不安」を感じて、そう聞いて来たのです。その際に私は「当たり前じゃないか!今必要なこと、知りたいことは"その飛行機に誰が乗っていたのか?身内は乗っていないかどうか"ということで、それがまさにニュースなのだから!」とかなり腹が立ったのですが、テレビですから怒りは抑えつつ、そのまま決然と「続けて下さい!」と言ったのを思い出しました。おお、俺って、木村太郎並みだったんだなあ。まあ、誰でもそう言ったでしょうけど。

この本を読んで気になった点は、

「千葉敦子さんという朝日新聞の記者の方が書いた『「死への準備」日記』という本に書かれてあった言葉」(71ページ)

とあったのですが、私もこの本は昔読んだことがあったけど、

「千葉さんって、朝日新聞の記者だったかな?読売新聞では?」

と思ったので調べてみると、なんと「東京新聞」の記者でした。4年間、東京新聞の記者をした後は、フリーのジャーナリストでした。松平さんは、この本が「朝日新聞社」から出ていたので勘違いしたのでしょう。でも、ちょっと調べればわかるのに。校閲は何をしていたのだ?と。

それと、言葉に関する本なのであえて言うのですが、

「歴史を紐解きながらご紹介して参ります」(156ページ)

の「紐解く」は、本来「繙く」で、しかも「本の紐を解く」つまり「本を開く」のが本義で、「歴史を紐解く」的な使い方は誤用であると言われていますが、それを断わりもなく、なぜあえて使ったのかな?と疑問に思いました。

 


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(2013、7、23読了)

2013年7月24日 12:00 | コメント (0)

新・ことば事情

5185「40数人」

 

広島・呉市の事件で、無料通信アプリ「LINE」で、「40数人」のグループで連絡を取っていたと、7月21日の日本テレビ『バンキシャ!』で報じていました。それを見て思ったのは、

「十数人」

という場合の「十」は、「漢数字」で書き、「10数人」とは書かないことになっています(『新聞用語集』など)が、これが、

「二十数人」「三十数人」「四十数人」・・・

となった場合も「漢数字」で書かないといけないのか?という問題です。

今回『バンキシャ!』は「洋数字」と混合で、

「40数人」

としていました。グーグル検索では(7月22日)

と、「漢数字」を使った方が多かったです。ちなみに「十」以降を順に調べてみると、

「10数人」=5550万件  >   「十数人」 =3780万件

「20数人」=3080万件  <   「二十数人」=3360万件

「30数人」=1250万件  <   「三十数人」=2070万件

「40万件」= 68万2000件< 「四十数年」=1300万件

「50数人」= 130万件   < 「五十数人」=1300万件

「60数人」= 137万件   < 「六十数人」= 870万件

「70数人」= 39万3000件< 「七十数人」= 697万件

「80数人」= 29万4000件< 「八十数人」= 546万件

「90数人」= 12万件    < 「九十数人」= 554万件

でした。これで見ると、ネット上では「10数人」だけは「洋数字」が優位ですが、「二十数人」以降は全て、「漢数字」が優位、ということになっていますね。これは意外でした。

(2013、7、21)

2013年7月23日 12:00 | コメント (0)

新・ことば事情

5184「『253』と『こちら』」

 

アシアナ航空機の墜落事故のニュースを「ミヤネ屋」で伝える際に、飛行機と管制塔のやりとりを再現したスーパーをチェックしていたらこういうものが。上が英語で、下が日本語に訳したもの。そういう演出でした。それが、下のように書かれていたのです。

「5452 San Francisco」  

「 253 サンフランシスコ」

あれ?なんで、下の日本語に訳したら、数字が「5452」が「253」に変わっているんだ?と思って、発注したディレクターに、

「なんで数字が変わるの?」

と聞きに行ったら、

「あ、それ、数字じゃないです!平仮名で『こちら』です!」

と言うではありませんか!

「253」

「こちら」

・・・手書きでスーパーを発注した時に、「字が汚い」と、こんなことが起きるのですね。

一度皆さんも書いてみてください。見えないこともない・・・という感じではないでしょうか?

そして、「上の段が数字」だと「下の段も数字だ」と思い込んでします、

「文脈の判断」

も起きているんでしょう。でも、文脈で言うなら、

「数字が変わるのはおかしい」

と感じる「文脈判断力」も、欲しいところではありますが・・・。

(2013、7、22)

2013年7月22日 17:57 | コメント (0)

新・読書日記 2013_123

『レイヤー化する世界~テクノロジーとの共犯関係が始まる』(佐々木俊尚、NHK出版新書:2013、6、10第1刷・2013、6、25第2刷)

 

「レイヤー」というのは、その筋(どの筋?)では有名な用語らしいですが、私は知りません。読んで、「あ、そうか」と思ったけど、一週間もしないうちに忘れてしまいました。たしか「層」とか、レタスの葉っぱのようなイメージがあるのですが、正解ですか?

著者の本は、新しく出ている物は大体読んでいる気がします。いつも新しい概念を、一般の人にも紹介・提示してくれていて、知的な刺激を受けています。

サブタイトルの「テクノロジーとの共犯関係が始まる」の「共犯関係」って、ちょっと危ない感じですが、好むと好まざるに拘わらず、時代の流れの中で巻き込まれて、関わらざるを得ない状態を「共犯関係」と呼んでいるようです。

これまでの大量生産・大量消費のテクノロジーから違う形のものに代わって来ている、という実感はあります。いま読んでいる藻谷浩介さんの『デフレの正体』にも、そういった視点が含まれていますし、分析は正しいのだと思います。

そうすると「マス・コミュニケーション」という形態はどう生き残れるのか?あるいは形態を変えざるを得ないのか?もしかしたら「維新」の「大阪都構想」のような動きも、そういったことと関係性があるのか?「地方分権」に見えて「ミニ中央集権」ではないのか?

いろいろなことを考えさせられた一冊ではありました。


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(2013、7、7読了)

2013年7月22日 10:22 | コメント (0)

新・ことば事情

5183「こんばば」

7月11日放送の「秘密のケンミンSHOW」で、大阪の方言として、

「こんばば」

を取り上げていました。それを見た「ミヤネ屋」のTディレクター(30代半ば)が、

「長いこと大阪に住んでるけど、こんな言葉聞いたことない」

と言うではありませんか。もっとも、T君はもともと静岡出身で、大阪在住はまだ10年ちょっとぐらいです。しかし、同じく関西出身の30代半ばのW君も、「知らない」と言います。

おかしいなあ。

皆さんはご存じですよね、「こんばば」。え?知らない?

しょうがないなあ。「こんばば」とは、

「根性ババ色」

の略語。「関西の若者言葉」です。「ババ」は、関西弁で「う○こ」のことですね。

でも、若いはずの30代のT君やW君が知らないということは、今の若者は使わない言葉なのかもしれない。"昔の若者言葉"になっているのではないか?と感じました。

家に帰って妻に、

「『こんばば』って意味が分かる?」

と聞いたら、

「根性の悪いおばあさん?」

と言われました・・・。まあ「こんばば」の「ばあさん」もいるでしょうね。

(2013、7、19)

2013年7月21日 12:34 | コメント (0)

新・ことば事情

5182「大きいお世話」

 

突然ですが・・・

「大きい荷物」

とも、

「大きな荷物」

とも言いますよね。文法的には「大きい」は「形容詞」、「大きな」は「形容動詞」でしょうか。しかし、

「大きなお世話」

とは言っても、

「大きいお世話」

とは言わないですね。これは、なぜなんでしょうか?

というのも、「ミヤネ屋」にご出演いただいているデーブ・スペクターさんがコメント中で、

「大きいお世話かもしれませんが」

と言ったのですが、これがひっかかったのです。普通は、

「大きなお世話かもしれませんが」

というところでしょう。あれだけ日本語に堪能デーブさんをもってしても、この微妙なニュアンスは使い分けられていないのです。

「なぜ『大きいお世話』とは言わないか」

と聞かれて、すぐには答えられません・・・。

もしかするとこの「お世話」は単なる「名詞」ではなく、

「(お)世話を焼く」

という「動詞」なのではないか?だから、形容詞の「大きい」だと違和感があって、形容動詞の「大きな」の方が合うのではないか?でも、

「大きな栗の木の下で」

は、違和感がありません。

「大きい栗の木の下で」

でも、おかしくはありません。

これについて、三省堂国語辞典編集者で早稲田大学非常勤講師の飯間浩明さんに、この前会った時に聞いたところ、

「『大きい・小さい』は、"比較"の時に使います。それに対して『大きな・小さな』は"主観"なので"絶対値"だと思います」

というお答えでした。つまり、

「相対評価と絶対評価の違い」

だと、まあ、そんな感じのお話しでした。「大きな」は「主観」であって「比較」ではないと。(ちょっと飲みながらの話だったので、記憶がぼやけているかもしれませんが。)

つまり「大きなお世話」と言うと、

「自分にとって、いらんおせっかい。」

という意味で、別に、

「誰それと比べると、ちょっとおせっかいの度合いが過ぎる」

というものではありませんね。大体、「おせっかい」と感じるのは「主観」であって「比較」ではないですからね。だから「大きいお世話」(比較)という表現はなじみにくい・・・ということですね。

それで「なるほど」と納得がいったのでした。

(2013、7、17)

2013年7月20日 12:32 | コメント (0)

新・ことば事情

5181「激似」

 

女優・小林聡美さんと離婚して2年たつ、脚本家の三谷幸喜さんに新しい恋人が!という話題を「ミヤネ屋」で取り上げたところ、

「元妻・小林聡美に激似」

という原稿が出てきました。この、

「激似」

ですが、

「げきに」

と読みます。なんだか「うま煮」のようです。

「酷似」

だと「音読み」で「こくじ」と読みますが、「激○○」の場合は、「じ」という「音読み」ではなく、「にる」という「訓読み」がくるんですね・・・。

「げきじ」

じゃあ、全然意味が分からないし・・・。

まだ、国語辞典には載っていないんじゃないかな?「激似」は。そう思って引いてみると、『三省堂国語辞典』『広辞苑』『明鏡国語辞典』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『新明解国語辞典』『新選国語辞典』『岩波国語辞典』『新潮現代国語辞典』には載っていませんでした。

『現代用語の基礎知識2013年版』にも「激似」は載っていませんでしたが、若者語として、

「ゲキアツ・劇(激)あつ」

は載っていました。意味は、

「一番流行している、旬である。また、程度がはなはだしく、あり得ないくらい良いこと。『あいつの髪型、ゲキアツやな~』。『劇的に熱い』から。ときに冗談を込めて、あり得ないくらいに悪いこと。」

とありました。「強調語」としての「激」は、例の「平成ことば事情5124」に書いた、

「激おこぷんぷん丸」

でも使われていますし、ここ数年のはやりなのかもしれません。まあ、これまでも使われてはいるんだけどね。篠山紀信さんの、

「激写」

の時は「激」のあとの「写」は「シャ」と「音読み」だったけど、

「激似」「激おこぷんぷん丸」

は、「激」のあとが「訓読み」というところが目新しく、新鮮なんでしょうね。

一応、米川明彦先生の『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』(三省堂)を紐解くと、「激写」は、「1975年(昭和50年)」の流行語で、

「写真家 篠山紀信の造語で、雑誌『GORO』(1975年4月号)の同誌撮影の山口百恵の写真に付けたタイトルが最初。▼その後、「激~」が週刊誌の見出しによく使われるようになった」

とありました。その流れだけど、ちょっと違うというところでしょうか。

あ!違う!「激」のあとに「訓読み」は、既にだいぶ前からあった!そう、

 

「激辛」

 

です。これは「激」のあとに「から(い)」と「訓読み」でした!

つまり「激似」は「激辛」の系譜だということですね。つまり「湖○屋」か。ヒーッ!

(2013、7、18)

2013年7月19日 18:27 | コメント (0)

新・読書日記 2013_122

『ボールピープル』(近藤篤、文藝春秋:2013、5、30)

 

著者は1963年生まれ、愛媛・今治出身、上智大のスペイン語学科卒のカメラマン。オーケーです!最初の3枚の写真で、惹かれたな!

サッカーが好き、綺麗な写真、海、空、雲、夕焼けが好き。笑顔が好きな人は、ぜひこの本を買ってパラパラと読んでください。ついつい、もう1ページ、もう1ページと読んでしまって、気付いたら読み終わっているから。

それにしても、「地球はサッカーの惑星だ」と感じることができますね。私が海外でサッカーを見たことがある国は、まだ8か国。全部、国際試合なんだけど、もっと、この本に出て来るような「ストリートのサッカー」「生活の中に溶け込んだサッカー」も見てみたいなあ。

そんな中に1ページ、サッカーの書籍が天井まで詰まった本棚をバックに、満面の笑みで「ペレ」のサインの入ったサッカーボールを持った80代後半のおじいさんの写真が。おお、賀川浩さんではありませんか!まだお元気なんだ!サッカージャーナリストで、賀川さんを知らない人はモグリです。一度お話を聞いてみたいなあ。


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(2013、7、15読了)

2013年7月18日 17:56 | コメント (0)

新・読書日記 2013_121

『日本人の9割に英語はいらない』(成毛眞、祥伝社黄金文庫:2013、6、20)

 

刺激的なタイトルだが、まあ、真実でしょうね。

そんなもんとちゃいますか?

もちろん「英語が出来たらいいなあ」と思う人は、日本人の5割ぐらいは、いるかもしれませんが、普段の生活では要らんでしょ。無くても生きていける。

そんな当たり前のことを、本を買って読んで確認する作業の中に、なにかプラスになるものは?と思ったら、この本、半分を過ぎたあたりから、「残りの1割の"英語が必要な日本人"」に向けた、英語習得術みたいなことも書いてある。なかなか、したたかですねえ。と、つまり、どちらの立場の人にもためになりそうな情報が記されているということですが、その方法は、誰にでもできるということもないかなあ。最後の方に書いてあったけど、英語の本を読む時間があったら、日本語の本でもっと日本の事を勉強した方がええんとちゃいまっか?ということですなあ・・・。


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(2013、7,9読了)

2013年7月18日 10:16 | コメント (0)

新・読書日記 2013_120

『私の個人主義』(夏目漱石、講談社学術文庫:1978、8、10第1刷・2010、12、6第67刷)

 

1978年に文庫で出てそれから32年、67刷ってものすごいロングセラーではないですか!

6月4日のサッカーワールドカップ・ブラジル大会アジア最終予選で、オーストラリアと引き分けて、5大会連続5度目のワールドカップ出場を決めた翌日の記者会見で、本田圭佑選手が、

「チームワークは、もともとあるもの。これから求められるのは"個"の力だ」

という厳しい発言をしたが、その「個」という言葉に反応して、我が家の本棚にあって、まだ読んでいなかったこの本に目が留まったというわけ。

明治44年と言うと1911年ですが、その年に漱石は、関西講演旅行に来ていたんですね。兵庫県明石市、大阪市、大阪府堺市。

その語り口は、「文豪」ではなく、「時代の流行作家」というような感じがしますし、語り口は予想に反して非常に現代的、古くありません。今、聞いても(読んでも)、「なるほど、そうか」とうなずいてしまいそうです。

講演のタイトルは、「道楽と職業」「現代日本の開化」「中味と形式」「文芸と道徳」そして「私の個人主義」。内容とともに、どういう「まくら(前説)」から本題に入っていくのか、そういった点も参考になりました。いやあ、こんな貴重な講演録が、今も簡単に手に入るとは!ぜひ、皆さん読んでください。漱石が身近に感じられますよ!


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(2013、6、10読了)

2013年7月17日 19:14 | コメント (0)

新・ことば事情

5180「申し訳ないけど」

 

最近、時々耳にする言葉に、

「申し訳ないけど」「悪いけど」

があります。何かを話す時の冒頭に、まずこの言葉を付けて、その後に持論を展開します。

「エクスキューズの枕詞」

のようです。この言葉を使う人は、実は、

「全く申し訳ないとも、悪いとも思っていない」

と思います。「何かを依頼するとき」に、

「申し訳ないけど、行って来てくれないか」

とか、

「悪いけど、あそこのホチキス取ってくれない?」

というように使う場合は、「申し訳ない」「悪い」という気持ちが表れているような気がしますが、「持論を通そうとする際」にこう言う人は、単なるエクスキューズであって、まったく申し訳ないなどと思っていない、単なる「上から目線の物言い」のように感じられます。ただ、そういったエクスキューズがないと、「上から目線だ」と批判されるので、それを避けようとしているだけでしょう、申し訳ないけど。

「申し訳ないけど」と冒頭で言うことで、「反論を防ごう」と予防線を張っているのではないでしょうか。ある意味「言論封殺の言い方」のように思えます、悪いけど。

一方的な決めつけの言い方だけに、これは「目上に対して」は、絶対に使わないでしょう。相手が「目下・格下」の場合に、"相手に配慮しているポーズ"を取っている言い方のように感じます、申し訳ないけど。

(2013、7、16)

2013年7月16日 17:06 | コメント (0)

新・ことば事情

5179「市税の対応のため」

 

7月12日の午前、宝塚市役所を訪れた63歳の男が火炎瓶で放火し、現住建造物等放火の現行犯で逮捕されました。その事件を伝えたお昼のニュースの中継で、

「男は、市税の対応のため市役所を訪れ」

と言っているように聞こえました。

でもこれは、おかしい。「対応」をするのは「男」の側ではなく、

「市役所職員」

のはずです。そこでデスクに「おかしいよ」と言いに行って原稿を見たら、なんとそこには「対応」ではなく、

「滞納」

と書かれていました。つまり、

「市税の滞納のため市役所を訪れた」

だったのです。しかし、これも問題あり!

「~のため」というのは「目的」を表すので、「滞納のため」では、

「滞納するため」

になってしまい意味が通じません。これは、

「市税の滞納の問題で市役所を訪れ」

とすべきところでしょう。

あんまり中途半端な省略をすると、いろんな意味で誤解を生じると思いました。

夕方のニュースでは、この表現はちゃんと直っていました。

(2013、7、12)

2013年7月16日 11:19 | コメント (0)

新・ことば事情

5178「『アノニマス』のアクセント」

 

最近よく耳にする

「アノニマス(Anonymous)」

という言葉。まだちゃんと覚えていなくて、言い間違ったりするのですが、意味は、

「政治的な意図を持ってハッカー活動を続ける国際集団」

ですね。この「アノニマス」のアクセントですが、

(A)「ア/ノ\ニマス」

(B)「ア/ノニ\マス」 

(C)その他

のどれでしょうか?(英語のアクセントは、「ノ」に強アクセントがあるようです。)

私は個人的には、

(A)「ア/ノ\ニマス」

なのですが。

この質問を、6月の用語懇談会放送分科会で各社の委員に投げかけました。その結果は、

(A)「ア/ノ\ニマス」=テレビ東京、KTV、日本テレビ

(B)「ア/ノニ\マス」=NHK

で、NHKが(B)「ア/ノニ\マス」とする理由は、

「『NHK日本語発音アクセント辞典』に『4拍以上の外来語(日本語)』は、終わりから数えて3拍目までを高く発音するとあるから」

ということでした。なるほど、「日本語」と捉えるなら、そういうことですよね。

ちなみに、6月26日に「ミヤネ屋」にご出演いただいた、こういった問題に詳しい専修大学講師の塚越健司さんは、

「ア/ノニ\マス」

(B)のアクセントで、しゃべっていらっしゃいました。

(2013、7、12)

2013年7月15日 13:10 | コメント (0)

新・ことば事情

5177「ラジコン」

 

7月10日の「ミヤネ屋」で、アメリカで「ラジコン」で空を飛ぶ、

「スーパーマンの模型」

というのを紹介しました。その際に最初、

「ラジコン模型」

と字幕も原稿もなっていたのですが、

「ちょっと待てよ、『ラジコン』は登録商標だったはず」

と思いだし調べてみたら、やはり、

「増田屋コーポレーション」

の登録商標でした。ということで、

×「ラジコン模型」→○「リモコン式模型」

と言い換えて放送しました。他にも言い換え例としては、

「無線(式)操縦(装置)、無線操縦の玩具、リモコン式、RC(カー)、ラジオコントロール、模型機無線(式)操縦(装置)、無線操縦の玩具、リモコン式、RC(カー)、ラジオコントロール、模型機」

などがあります。

 

(追記)

7月25日の読売新聞の「顔」欄ラジコン飛行機の世界速度記録を樹立した上山(うえやま)憲一さん(60)という方が紹介されていました。そこでは「ラジコン」という言葉は使われないで、

「電動ラジオコントロール飛行機」

「電動式のラジオコントロール飛行機」

「ラジオコントロール飛行機」

という表現がなされていました。

ちなみに、その世界記録の速度は、

「時速219、85キロ(平均速度)」

だそうです!これまでの記録は1989年にドイツ人が作った「時速163、68キロ」だったそうです。

(2013、7、25)

 

(2013.7.10)

2013年7月14日 17:04 | コメント (0)

新・ことば事情

5176「多国籍キャバクラ」

 

7月9日の「ミヤネ屋」の「ニュース250」(ニーゴーマル:午後2時50分ごろに放送するから、スタッフはそう呼んでいます)で、キャバクラの強引な客引きをしていたバングラデシュ人が逮捕されたというニュースを報じていました。そのキャバクラのことを、

「多国籍キャバクラ」

と言っていました。

なに?「多国籍キャバクラ」?それって国連の主導で運営されているのか?

と思わず叫んでしまいました。初めて耳にしました、「多国籍キャバクラ」。なんじゃ、そりゃ?

インターナショナルな時代になっているんですねえ・・・人種のるつぼだな、こりゃあ・・・。

(2013、7、10)

2013年7月14日 11:01 | コメント (0)

新・ことば事情

5175「事件と事故2」

平成ことば事情2885で「事件と事故」について書きました。

その後、2012年に、京都・祇園と亀岡市で、車による死亡案件があり、その際にも、

「事件か?事故か?」

という判断で、放送各社は悩みました。最初は「事件」か「事故」か、わからないことが多いのです。「ひき逃げ」も、「ひいた」時点では「事故」でも、「逃げた」時点で「事件」になります。

2012年9月に名古屋で開かれた用語懇談会放送分科会で、関西テレビの委員から、

「京都府亀岡市で通学中の小学生の列に車が突っ込んで3人が亡くなったのは『事故』でしょうか?『事件』でしょうか?各社の対応をお聞かせ下さい。」

という質問が出ました。ちなみに「関西テレビ」では、当初「事故」としていましたが、社会への影響や結果の重大性から「事件」に切り替えたとのことでした。

各社の対応は、以下のようなものでした。

【毎日放送】「祇園」のケースは最初「事故」。人をはねてからもアクセルを踏んでいたことがわかって「事件」に変えたが、「病気だったのでは?」という話が出た時点で、また「事故」に戻した。「亀岡」は予断を入れずに「事故」。

【テレビ東京】「故意」でなければ「事故」。ひき逃げは故意なので「事件」。クレーンの横転などは「事故」。

【関西テレビ】ワイドショーでは「事故」でも「この"事件"は~」と言うことがある。

【日本テレビ】明確な定義はないが、裁判になったら「事件」ということも。「亀岡」は「事故」。7月の初公判では一部「事件」と言ったところも。

【フジテレビ】明確な線引きはない。「ひき逃げ」は「事件」。今回「無免許」で結果重大なので(FNNは)「事件」。(関西テレビと同じ。)

【朝日放送】「亀岡」は、地元警察が加害者に対して「被害者情報」を流してしまったりしたミスもあって、地元の被害者感情を考慮して「事故」と出稿しにくい雰囲気があったのではないか?朝日放送では「事件」と言い続けている。

NHK】「亀岡」は「事故」。

とのことでした。

そして先日、マイケル・ジャクソンさんが2009年に死亡した案件について、

「事件」

としてよいのか?という質問を受けました。この件については、マイケルさんの主治医に対して、

「過失致死で禁錮4年の判決」

が出ています。改めて辞書を引いてみたところ、

「事件」は、いわゆる「広義」にはこういった案件にも使えそうだということ、また「事件か事故か」という区別については「狭義」でいうところの、

「『訴訟事件』の略称」

として使用するものに使うような気がしました。

(2013、7、12)

2013年7月13日 11:59 | コメント (0)

新・ことば事情

5174「お別れの会に出る人は」

"バタヤン"こと、歌手・田端義夫さんの「お別れの会」の様子「ミヤネ屋」放送しようとした際に、スタッフが質問してきました。

 

「『告別式』だと、来る人たちは『参列者』ですけど、『お別れの会』の場合は、なんと呼べばいいのでしょうか?『参列者』?『参会者』?『参加者』?『出席者』?」

 

これに対する私の答えは、

 

「うーん、『お別れの会』も実質『告別式』だから『参列者』でいいと思うけど。ただ『お別れの会』って『会』が付いているから『参会者』という表現もあるだろうね。でも『さんかいしゃ』は音で(耳で)聞いて分かりにくいね。『参加者』というと、なんだか『スポーツ大会』に参加するみたいな感じだし、『出席者』というと『出席が義務付けられている会のような印象』もあるから、この場合は『参列者』で問題ないんじゃないかな」

 

というものでした。

(2013、7、12)

2013年7月12日 21:57 | コメント (0)

新・ことば事情

5173「バーバリアンと蛮族」

 

ヨーロッパで、

「蛮族」

のことを、

「バーバリアン」

と言いますが、これと、「ノンバーバル・コミュニケーション」(「言葉」を使わない身振り手振り等のコミュニケーション)の、

「バーバル」

は関係あるのでしょうか?また、

「ベルベル人とバーバリアン」

の語源は同じなんでしょうか?などと疑問を持っていたらある本に、

「『ベルベル人』は、『ギリシャ語』では『バルバロイ』と言う」

と書いてありました!つまり、ギリシア人から見て、

「訳の分からないことをしゃべる人」

「バルベルベル人」で「バルバロイ」。その「バルバロイ」が「バーバリー」になり、その人を「バーバリアン」と呼ぶようになったのではないか?と推測できますね。(できませんか?)

 ギリシャ人から見れば「ガリア(今のフランス)」や「今のドイツあたり」も、「訳の分からないことをしゃべる人」

がいっぱいいる「野蛮な土地」だったのでしょう。また「ベルベル人」は、「モロッコ」にも多いのだそうです。この基本には、

「地中海沿岸文明」

ということがあったのではないか?と思うわけです。「バベルの塔」の「バベル」と「バルバロイ」も関係ありそうだな。

(2013、7、12)

2013年7月12日 18:56 | コメント (0)

新・ことば事情

5172「人々と人たち」

<2006年12月21日にタイトルを書いたままほったらかしでした。当時の番号は、「平成ことば事情2816」>

 

「複数形を表す日本語の表現」には、何通りか方法があると思いますが、それが、

「人」

の場合には、

「人々」と「人たち」

の二通りが考えられます。

漢字の畳語である「人々」は、「やや硬いイメージ」があります。つまり「書き言葉的。」

それに対して、複数を表す「たち」は、「和語」だからか「軟らかいイメージ」があります。口語的、話し言葉的なイメージですね。

そのイメージは文脈の中でどう使うかによって使い分けが出来ると思います。

フォスターの名曲の日本語タイトル

「故郷の人々」

は、「人々」とすることで、格調と郷愁が感じられますが、これが、

「故郷の人たち」

というと、急に砕けた感じで格調がなくなり、

「きのう会ったばっかりやん!」

という日常感が漂うような、そんな気がしますね。

(2013,7,12)

2013年7月12日 15:54 | コメント (0)

新・ことば事情

5171「難しい漢字のゆがく」

<2011年6月8日にタイトルを書きました。当時は「平成ことば事情4382」>

 

「ゆがく」

という言葉を漢字で書くと、どう書くでしょうか?まあ「お湯」を使うので、

「湯掻く」

あたりが妥当かな。でも「掻く」が表外字だから、平仮名で「ゆがく」と書くか、または「交ぜ書き」で、

「湯がく」

と書くか迷うところだな。

そう思って辞書を引くと、確かに「湯掻く」はあったのですが、もう一つ、見たこともない漢字が記されていました。それは「さんずい」扁に、「論」の「つくり」のような字を書いた、

「瀹」

という漢字でした。初めて見た!

ちょっと、ボートを漕いでいるような感じがします。ゆだってしまったりして。

漢字って、面白いですねえ・・・。

(2013、7、10)

2013年7月12日 09:54 | コメント (0)

新・ことば事情

5170「なぜ『サケ』は濁るのに『サンマ』は濁らないのか?」

「生サンマ」

という言葉が出てきました。で、疑問が。

「『サケ』は、『時ザケ』『時サケ』のように、濁る・濁らないの両方の言い方があるが、『サンマ』の場合、『生サンマ』とは言っても『生ザンマ』とは絶対に言わない。なぜなんだろうか???」

「サケ」は2文字で、「サンマ」はそれより多い3文字だから?

いやいや、「三昧(さんまい)」は4文字だけど、「贅沢」が頭にくっついた「贅沢三昧」は、「ざんまい」と濁るなあ・・・。

濁る・濁らないで言うと、「すし」。店の名前で、

「○○すし」

という場合は、濁って、

「○○ずし」

となることが多いですね。でも「そば」は、上に何がついても濁らない。

「にしんぞば」

とはならないのです。なんで?・・・あ、「そば」は「ば」がもう濁っているから、「そ」まで濁ることはないということか。それなら「酒」は?上に何かがついたら、

「にごりざけ」「あまざけ」

のように濁ることがある。「濁り酒」というぐらいですから・・・って、しゃれてる場合じゃない。

複合語の「濁る・濁らない」は、複合語の結合度合いによる。強ければ「濁る」、弱ければ「濁らない」。しかし、

「どこまでが弱くてどこからが強いのか?」

という「客観的な判断基準」がない。だから、「濁る・濁らない」は、客観的には決めにくい・・・ということなのだと思います。

うーん、答えは今後の課題ということで・・・。

(2013、7、12)

2013年7月12日 02:53 | コメント (0)

新・ことば事情

5169「獅子心王」

 

ヨーロッパの歴史について書かれた本『日本人のための世界史入門』(小谷野敦、新潮新書)を読んでいたら、

「獅子心王」

という名前が出てきました。12世紀のイングランドの王、

「リチャード1世」(1157年~1199年)

のことです。生涯の大部分を戦闘の中で過ごし、その勇猛さから「獅子心王」と呼ばれたそうです。昔、高校時代に世界史で出て来たような気がしますが、久々に見ました。

その漢字、「獅子心」という文字を見て、私は「あっ」と思いました。もう10年ぐらい前のSMAPの曲、

「ライオンハート」

は、ここから名前を取ったのではないか?と。また、その頃の、もじゃもじゃヘアーの総理大臣・小泉純一郎のホームページの名前「ライオンハート」も、実は「獅子心王」を少しイメージしていたのかもしれないと思いました。今頃思っても、遅いのですが。

「百獣の王・ライオンのような心」

ということは、

「強い心」「勇ましい心」

ということなんでしょうね。そうすると思い出すのは、メル・ギブソン主演の、

「ブレイブハート」

という映画。13世紀末、悪政に苦しむスコットランドの独立と解放を目指して戦った実在の英雄ウィリアム・ウォレスの物語。あ、これはイングランドではなくスコットランド、時代も「獅子心王」よりも100年ほど後ですね。

(2013、7、11)

2013年7月11日 21:59 | コメント (0)

新・ことば事情

5168「気温計」

7月10日の『関西情報ネットten.』で、猛暑の京都市動物園から中継をした、中谷しのぶアナウンサーが、デジタル式の温度計を取り出して、

「気温計では、40℃です!」

と言いました。それを聞いて「あれ?」と思ったのは、

「気温計」

という言い方に違和感があったから。普通、これまでは、

「寒暖計」

あるいは、

「温度計」

と言ったのではないでしょうか?まあ、「寒暖計」というと、あの下のほうに赤い玉が付いていて水銀?が入っているようなアナログな感じのもののイメージが強いですが。

『精選版日本国語大辞典』の「温度計」の「語誌」を見ると、こういった記述がありました。それによると、

(1)  器具は明和2年(1765)に日本に伝わり、オランダ語Thermometerの訳語として「感熱昇降器」(平賀源内)、「験温器」「験温管」「験温儀」「列氏験器」「寒暖計」などの名称でよばれていた。

(2)  幕末までは「験温器」が多用されたが、明治10年ころから「寒暖計」が優勢になった。

(3)  明治後期に「温度計」が登場し、昭和40年ころからこれが普通の名称となった。

 

とありました。オランダ語Thermometerは、おそらく「テルモメーター」と読んだのでしょう。ということは、あの医療器具会社の「テルモ」は、そこから名前を取ったのかなあ。

いや、話がそれました。

1765年に日本に伝わったと具体的な年代が分かっているのですね!そして、

「感熱昇降器」(平賀源内)、「験温器」「験温管」「験温儀」「列氏験器」「寒暖計」

の中から、幕末までは、

「験温器」

が多用された、明治10年(1877年)ころから、

「寒暖計」

が優勢になった。そして、明治後期に登場した、

「温度計」

が、昭和40年(1965年)ころから、これが普通の名称となった、と。

平賀源内、こんなところにも顔を出している!「感熱昇降器」って、そのままじゃないですか。平賀源内だと、

「ネツハカール」

とか、そんな名前を付けそうですが。

また、話がそれました。

ということは、「温度計」が定着してからすでに半世紀近く。「デジタル」の物も登場しているのですから、新しい名前が出て来てもいい頃なのではないでしょうか?

「寒暖計」は「死語」かなあ?「温度計」も???

グーグル検索では(7月11日)、

「気温計」= 24万9000件

「温度計」=795万0000件

「寒暖計」= 12万8000件

でした。

 

(2013、7、11)

2013年7月11日 12:49 | コメント (0)

新・ことば事情

5167「グーグルグループ」

 

インターネット上でメールを共有できる米・グーグルの無料サービスで、官庁や個人メール6000件以上が公開状態(誰でも閲覧できる状態)になっていたことを、7月10日の読売新聞朝刊がトップで報じました。この無料サービスの名前が、

「グーグルグループ」

このニュースを報じていた7月10日のNHKお昼のニュースの高瀬アナウンサーとっても言いにくそうでした。

特に難しくない発音ですが、何度も出て来ると、なんだかグルグルグルグル回ってしまうような感じで、平衡感覚を失う気がします。ためしに皆さんも3回続けて言ってみてください。

「グーグルグループ、グーグルグル-プ、グーグルグループ」

ほーら、なんだか頭の中がグルグルグルグルしてきたでしょ?

こういうときは、しっかりと意識を持つことが大切です。

(2013、7、10)

2013年7月10日 17:34 | コメント (0)

新・ことば事情

5166「3種類の絶対ダメ」

 

「ミヤネ屋」のテロップで、発言フォローのテロップをチェックしていました。すると、

 

父は絶対ダメって言う

 

という一文が出てきましたが、これはカギカッコを付けた方がいいなあと思ったのですが、よく考えると、カギカッコの付け方によって微妙にニュアンスが変わってきます。と言うか、どうしゃべっていたかによって、カギカッコの付け方が変わります。つまり、

(1)父は「絶対ダメ」って言う

(2)父は絶対「ダメ」って言う

そして、こういったことも考えられます。

(3)父は絶対「絶対ダメ」って言う

 

(3)は、(1)の強調形ですね。実際には(3)は言っていないので、この場合は(1)か(2)ということになりますが。

父の発言内容は(1)のほうが(2)よりも強いのだけれども、「ダメ」と言うであろうと予測としては、(2)のほうが強い感じがします。どちらのカギカッコの付け方でも、意味はほぼ同じなのですが、ニュアンスは微妙に変わってきます。

実際に発言者がどうしゃべっているかを確認して、カギカッコの付け方をチェックする必要がありますね。

(2013、7、8)

2013年7月10日 12:34 | コメント (0)

新・読書日記 2013_119

『テルマエロマエⅥ』(ヤマザキマリ、エンターブレイン:2013、6、24)

5巻が出たのが去年の9月末。もう、忘れていたら、第6巻が出ました。待ってました!と買って読んだら・・・・あれえ?これが最終巻!?終わってしまいました・・・。

うーむ、あのペースでダラダラ行っても、確かにもうネタギレっぽかったし、ここらあたりで締めくくるのがローマっ子のけじめか?映画化もされたし、良かったのかもしれないな。でも、最終ページを見ると見開きで予告が!なんと201310月号より『コミックビーム』で新シリーズが連載される、らしい。『コミックビーム』は読まないけど、でも楽しみでは、ある。

 


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(2013、7、5読了)

2013年7月10日 11:07 | コメント (0)

新・ことば事情

5165「二君」

 

坂口安吾の『堕落論』を読んでいたら、

「二君に仕える」

という言葉が出てきましたが、その「二君」に、

「じくん」

とルビが振ってありました。

え?「にくん」じゃないの?と思って辞書を引くと、しっかり、

「じくん(二君)

とありました。知らなかった!

坂口安吾は、48歳で亡くなっていました。もうとっくにその年齢を越えてしまいましたが・・・写真を見ると、老けてるなあ、昔の人は。

 

 

(追記)

実は、これを書いたのが『堕落論』をまだ読んでいる途中だったのですが(あんなに短いのに)、最後まで読むと、また似たような言葉が出てきました。最初の「二君」の文脈は、

「仇敵なるゆえに一そう肝胆相照らし、たちまち二君に仕えたがるし、昨日の敵にも仕えたがる」

で、似たようなものが出て来たのは、

「女心は変わりやすいから『節婦(せっぷ)は二夫(じふ)に見(まみ)えず)』という、禁止自体は非人間的、反人性的であるけれども」

という中の、

「二夫(じふ)」

で、ともに「二」と書いて「じ」と読むところが共通しています。

(2013、7、10)

 

(2013、7、9)

2013年7月 9日 13:23 | コメント (0)

新・ことば事情

5164「有利さと右利き」

20121012日に書き始めました。当時は「平成ことば事情4970」>

 

「有利さ」

と書かれていたものを、

「右利き」

と読んでしましました。意味が通らずに「なんだこれ?」と思いました。

・・・「老眼」が、進んでいるようです。

 

あれから9か月、日々「老眼」は進み、でもなんとか老眼鏡はかけずに頑張っています。メガネを額の上に押し上げて目を近づけて読むと、

「紙の凸凹」

が見えて、まるでそれが、

「月面のクレーター」

みたいで面白いです。「月面」に行ったことは無いけれど。

 

(2013、7、5)

2013年7月 7日 17:45 | コメント (0)

新・ことば事情

5163「趣味趣向」

 

「ミヤネ屋」のナレーターのNさんから質問受けました。

「これ、原稿に『趣味趣向』って書いてあるんですけど、正しくは『趣味嗜好』じゃないんでしょうか」

あ!たしかに!これは「趣向」ではなく「嗜好」だ!

「しゅみしゅこう」(趣味趣向)

「しゅみしこう」(趣味嗜好)

発音するとよく似ているので、言いやすい方、書きやすい方に流れていんではないか?と、間違われた原因を分析しました。特に「嗜好」の「嗜」は「表外字」なのでなじみが薄いということもあるんでしょうね、きっと。ネットのグーグル検索では(7月5日)、

「趣味趣向」= 602000

「趣味嗜好」=1120000

で、まだ正しい「趣味嗜好」のほうが倍ほど使われていますが、間違った「趣味趣向」もかなりの件数出て来ていますね。中には、「どっちが正しいの?」と疑問を持っている人も相当数いるようですね。

(2013、7、5)

2013年7月 7日 11:44 | コメント (0)

新・ことば事情

5162「サイバー委員」

 

7月4日の産経新聞・夕刊1面の「夕焼けエッセー」(読者投稿のコーナーのようです)に、大阪・高槻市の木部倫子さん(45)という方のエッセーが載っていました。タイトルは「サイバー委員」

なんだろうな?と思って興味を持って読んだら、7年前、当時小学5年生だった娘さんが、学校の委員会活動でなろうと思っていたのがその「サイバー委員」。それを聞いた木部さんは、

「さすが、いまどきの小学生は、小さいころからコンピューターやインターネットに慣れ親しんでいるので、そんな委員会があるんだ!」

と解釈。娘さんが、

「でも、サイバー委員は、朝早く学校に行かないとあかんねん。それに夏休み中も、お当番の仕事があるねん」

とつぶやくのを聞いて、

「朝、みんなが登校する前にパソコンを立ち上げたり、夏休中も、何かメンテナンスや、ウイルス対策のお仕事があるのだろう」

と納得。

「何事も経験!頑張ってみたら?」

と後押しすると、娘さんは決心したように張り切って、

「やっぱりサイバー委員やってみるわ。トマトできたら、もらえるし」

へ?

娘さんが悩んでいた「委員」は、「サイバー委員」ではなく、

「栽培委員」

だったというオチです。大阪らしい母娘の会話なあ。木部さん、文章もお上手ですなあ!

でも、もしかしたら、

「裁判員」

だった...なんてことはありませんかね。小学生だから、ないか。これが成人していたら、あるかもね、「裁判員」。しかも、それ(裁判員)をネットでやる(そんなのあるのか?)としたら、

「サイバー裁判員」

言いにくいったら、ありゃしない。しかも、その裁判員を栽培したら(?)、

「サイバー裁判員栽培委員」

これ、アナウンサーの「カツゼツ練習」に、いかがでしょうか?

(2013、7、5)

2013年7月 6日 17:43 | コメント (0)

新・ことば事情

5161「つきづきしい」

 

阿刀田高さんの『悼む力』(PHP:2013、6、24)という本を読んでいたら、

「人の世の姿がつきづきしい」218ページ)

のように、

「つきづきしい」

という言葉が、何度も出てきました。

これ、知りません。使ったことがないです。

『精選版日本国語大辞典』を引くと、

「つきづきしい」=いかにも似つかわしい。ふさわしい。好ましい。調和がとれている。

という意味でした。

「ちょうどよい」「つり合い」

という感じでしょうか。『三省堂国語辞典』には「雅語」として載っていて、

「似合わしい。ふさわしい」

とありました。語感から言うと、

「ツキュディデス」

というのも思い出しました。哲学者でしたっけ?ウィキペディアでは、

「トゥキュディデス」

で出ていました。

「古代アテナイの歴史家で、オロロスの子。代表作はペロポネソス戦争を実証的な立場から著した『戦史』。トゥキディデスはこの戦争に将軍として一時参加したが、紀元前422年のトラキア・アンフィポリス近郊での失敗により失脚、20年の追放刑に処された。」

なのだそうです。

うーむ、つきづきしい?

(2013、7、5)

2013年7月 6日 10:48 | コメント (0)

新・読書日記 2013_118

『悼む力~逝ったあの人へ、生きる自分へ』(阿刀田高、PHP:2013、6、24)

阿刀田さんも、もう80歳近く。たぶん、うちの父と同世代。「悼む」と言うのは先輩、同輩、後輩、たくさんの人を見送ってのことだろう。サブタイトルがそれを表している。

1章は、自らと付き合いのあった故人をしのんだ「弔辞」とも言うべき文章。井上ひさし、井伏鱒二、色川武大、源氏鶏太、立松和平、新田次郎、藤沢周平、藤原伊織、松本清張、米原万里・・・いまは亡き作家たち。みな、阿刀田さんと交流があったんだ!と興味深く読んだ。

2章は翻って「生きる」方法論。そして第3章は「読書が培う悼む力」として、「生きる」ために必要な「読書」について書かれている。この本は、読むべき本の一冊なのかもしれない。この本の中に出て来た表現で

「"あえかに"美しい」(180ページ)

「人の世の姿が"つきづきしい"」(218ページ)

の意味が分かりませんでした。それについて調べて「平成ことば事情」に書きました。


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(2013、6、26読了)

2013年7月 5日 17:52 | コメント (0)

新・ことば事情

5160「女性『を』暴行し」

200712月に書き始めた時の番号は「平成ことば事情3172」でした>

 

さいたま市のOLが暴行・殺害された事件で容疑者が逮捕されました。そのニュースを報じた2007年12月5日の日本テレビの『ニュースリアルタイム』で、鳥羽アナウンサーは、

「20代の女性『を』暴行し」

と言っていましたが、これは、

「20代の女性『に』暴行し」

ではないのでしょうか?「女性」は「暴行の対象」ですから「に」。これが「殺し」なら「女性を」なのですが。助詞が違います。

それから2年ほどたった2009年10月26日のお昼のニュース。滋賀県の山に登山して行方不明になった人のニュースで、

「蓬莱山に登っていて」

リードにはあったのに、本文の中では、

「蓬莱山を登っていて」

「を」になっていました。これも「助詞」が違います。

どうも最近、助詞の使い方が乱暴です。というか、

「助詞の使い方が身に付いていないのではないか?」

と思うことがよくあります。助詞を使わずに話し、助詞を使わずに文章を書くことが多いからではないか?と思っているのですが・・・。

助詞をきっちり使えないと、日本語の言葉の、文章の美しさもわからなくなるような気がするのは私だけでしょうか?

(2013、7、5)

2013年7月 5日 15:47 | コメント (0)

新・読書日記 2013_116

『衆愚の病理』(里見清一、新潮新書:2013、6、20)

 

著者は現役の医師。私と同い年。こんなに書いちゃっていいのかな。かなりの「トンデモ」意見が満載で面白いが、面白いと思って読めない真面目な人は、読み出してしばらくすると、ハラが立って、文字通りこの本を放り投げてしまうかもしれない、危険な本。なんたって民主主義を信じていない...ふりをしてる。衆愚によって選ばれた議員なんかに任せてもダメ。ここはひとつ、尊敬の対象としての天皇陛下と、あとは自衛隊に政治を任せれば・・・なんて書いてある。エジプトか!日本をエジプトにする気か?「ロジカルでシニカル、時にアクロバティックな議論」という評が書かれているが、その言葉にウソはない。

著者は昔、平成版の「白い巨塔」の制作に協力したことがあるという。あ、それでペンネームが「いいもん」の医者の「里見」か。

「敗戦処理はエースの仕事」とか「民主主義がヒトラーやルーピーを生む」とか「人は思考停止を欲する」などは「その通り!」という部分も多いのだが、時に論理は飛躍する・・・しすぎる。著者が好む「落語」的な話の飛躍がある。落語はSFだからね。この本(の考え方)、全体としては、☆3つは、あげられないよなあ。危ないです。


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(2013、7、4読了)

2013年7月 5日 11:43 | コメント (0)

新・ことば事情

5159「あえか」

 

阿刀田高さんの『悼む力』(PHP:2013、6、24)という本を読んでいたら、

「あえかに美しい」180ページ)

という言葉が出てきました。

「あえか」

って何だろう?初めて見ました。「あやか(綾香)」は知ってるけど。

『精選版日本国語大辞典』を引くと、

「あえか」=(1)触れれば落ちるようなさま。危なっかしい様子。(2)容姿や気持ちなどがかよわく、なよなよとしたさま。きゃしゃであるさま。ふつう若い女性に関して用いられ、上品で美しいという感じを伴って用いられるこが多い。

なんと用例は「源氏物語」から!そんな雅な言葉なんだ・・・ひとつ、お上品になった気がします。

(2013、7、5)

2013年7月 5日 07:46 | コメント (0)

新・ことば事情

5158「飛んだと落ちた」

 

7月3日、「ミヤネ屋」で、ロシアのロケットが打ち上げ直後に炎上・墜落したというニュースを伝える予定でした。ところが、時間の都合で、そのニュースが入らなくなりました。それを伝えて来たスタッフが、

「ロシアのロケット、飛びました」

と言ったところ、それを聞いたスタッフは、

「え?ロシアのロケットは、落ちたんと違うの?」

と答えました。ちなみに、予定していた項目が放送されないことを、この業界では、

「飛んだ」

とも言いますし、

「落ちた」

とも言います。モノが「ロケット」だけに、どちらで言っても「ややこしい」事態でした。

(2013、7、3)

2013年7月 4日 21:30 | コメント (0)

新・ことば事情

5157「アゴーギク」

小林研一郎先生の指揮する「水のいのち」の練習で、先生がおっしゃった言葉に、

「アゴーギグ」

というのがありました、「演奏のテンポ」に関するもののようですが、意味が分かりません。国語辞典を引いても載っていません。音楽用語なので「イタリア語」ではないか?と思いイタリア語辞典を引きましたが、載っていません。

たまたま家の本棚で見つけた『音楽中辞典』(音楽之友社、1979を引くと・・・載っていました。最後は「グ」ではなく「ク」、濁りません。つまり、

「アゴーギク」

でした。これは、

「ドイツ語」

だそうです。 意味は、

「速度法。演奏の時に、テンポに微妙な変化をつけて精細ゆたかにする方法。リーマンの創始した語で、デュナーミクの対概念。ひろくラレンタンド、アッチェレランド、テンボ・ルバートなどもこの概念に含まれる」

とありました。「ラレンタンド」「アッチェレランド」「テンボ・ルバート」は知っていました。それらの総称と考えればいいのでしょうか。また、説明の中に出てきた、

「デュナーミク」

も引いてみると、

「強弱法、力度法のこと。強弱変化による表情法。を意味する術語。基本的な用語や記号には、fp、クレッシェンド、ティミヌエンドなどがある。」

と記されていました。

まだまだ知らないことは「山のようにたくさん」あります。

「音楽」と「言葉」の世界は、「海のように深い」です。

(2013、7、2)

2013年7月 3日 21:24 | コメント (0)

新・読書日記 2013_115

『神の雫38』(作・亜樹直、画・オキモトシュウ、講談社:2013、6、21)

いよいよ第11の使徒対決へ!スペインワイン対決が見せるものは?ここに出てくるスペインワイン、飲んでみたいなあ、取り寄せられないのかなあ。


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(2013、6、30読了)

2013年7月 2日 21:08 | コメント (0)

新・ことば事情

5156「時鮭はザケ?サケ?」

「時鮭」

のシーズンに入った5月初旬、2013年5月10日の読売テレビのお昼のニュース「時鮭」が大阪中央卸売市場に入荷し、初セリが行われた様子を伝えていました。

「トキシラズ」

とも呼ばれるこの魚、担当のYアナウンサーから、

 「辞書を引くと、『トキザケ』と濁った読み方しか載っていないのですが・・・」

 という質問を受けました。『広辞苑』を引くと確かに、

「トキザケ」

と濁って見出しに出ています。過去にこのニュースを読んだとき、私はずっと、

 「トキサケ」

 濁らずに読んできました。また、このニュースを取材した記者の原稿にも、

「トキサケ」

濁らないルビが振ってあります。

なぜ辞書は濁っているのかはわかりませんが、「秋鮭」もやはり「濁って」

「アキザケ」

となっています。(「時鮭」「秋鮭」を見出しに採用していない辞書も多いですが)

東西の違いで言うと「サケ」か「シャケ」かの問題はよく言われることなのですが、「サケ」「ザケ」も東阪の差があるのでしょうか?

また「鮭」と「酒」との区別を付けるために「濁る・濁らない」の違いがあるのでしょうか?わかりませんが。

結局、この日のお昼のニュースでは、「濁らず」に、

「トキサケ」

で放送しました。(読みもスーパーも)同じ日のABC(朝日放送)のお昼のニュースも、

「トキサケ」

「濁っていません」でした。

各社の知り合いに「濁りますか?濁りませんか?」とメールで聞いたところ、

NHK・OBのSさんからは、

NHKでは特に決めていませんが、(私は)『トキザケ』と連濁し『平板アクセント』で読むと理解しています。しかし最近は(この20年ぐらい)、連濁をしない例が見られます。鮭については『塩ざけ』を『シオサケ』という人がいます。『回転寿司』も『回転すし』と表記している店が増えています。いろいろと考え合わせると、『Z音になる連濁は嫌われ始めている』と言えるかもしれません。『牡蠣』も『なまかき』というのを見たことがあります。連濁、連声は見た目の通りのつながり方に変化しているのかもしれません。『ウ音便』の衰退とも関連するのでしょうね。」

と、大変、専門的なご意見を頂きました。ありがとうございます。

静岡放送OBのKさんからは、

「個人的見解です。私は『トキサケ』と清音で読みます。『秋鮭』も『アキサケ』と清音です。濁ると気持ち悪いですね。」

とのこと。その感覚、私も分かります。

ABC(朝日放送)のAアナウンサーからは、

「『時鮭』ですが、弊社のニュースでは『ときさけ』と濁らずに読んでいます。ちなみにこの日の朝日新聞夕刊の記事でも、こちらは漢字を使わずに「トキサケ」と濁っていないカナ表示での扱いがあります。今回の道浦さんのご指摘にあるように、私もこれまで、何の     疑問も持たずに『ときさけ』だと思っていました、というより思っています、今でも。(笑)辞書表記が濁っていることに初めて気づいたような次第です。何の根拠も見出せませんが、『時鮭』は『ときさけ』で濁らないのが普通かと思うのですが・・・?」

Aさんも私と同じ感覚ですね。ちなみに5月10日の日本経済新聞夕刊の見出しと本文も、

「大阪で時サケ初セリ」

と、濁らない「時サケ」でした。

福岡放送のKアナウンサーからは、

「福岡県の遠賀川がサケ遡上の南限で、『帰ってきても数匹』いう魚です。頻繁に使う言葉でないので、過去のローカルニュース原稿に見当たらないと思います。アナウンス部員にも聞いてみます」

ということで、実際に聞いてみてくれたところ、こんな答えが返って来たそうです。

『難しい。ルビに濁っていない『トキサケ』と書いてあったら、辞書には『トキザケ』と濁っていると指摘して、デスクと相談する。『広辞苑』には『トキザケ』と濁って載っているが、『大辞泉』では両方併記されていた。ちなみに、FBSの記者パソコンで『トキサケ』と濁らずに入力すると、一発変換されるが、『トキザケ』と濁って入力すると、分割変換される。理由はわからないが・・・。北海道に住んでいた人間としては『トキサケ』と濁らない気はする。一方、『秋鮭』は『アキサケ』と濁らない読み方で間違いないと感じている。辞書には載っていない言葉。新聞でも、濁らない『秋サケ』が使われている。』

また、NHKのHさんからは

「NHKのニュースでは数回しか出ていませんが、いずれも『トキサケ』と濁らずに読んだようです。1つは何年か前の大阪中央卸売市場のニュースで、多分、市場でそう呼んでいたのでしょう。また札幌でのAPECで出された料理のメニューに、『時サケのムニエル』があったそうです。ただ『トキザケ』を×にはできないでしょう。」

とのこと。

さらに、NHK放送文化研究所のSさんからは、

「連濁関連で最近よく思うことは、ある資料に『トキサケ』と書いてあったとしても、それを全員が『トキサケ』と読むとは限らないということです。『トキザケ』と書いてあれば間違いなく『トキザケ』ですが、『トキサケ』の場合には『トキサケ』『トキザケ』両方とも読む(どちらでもかまわない)という人が、相当数を占めるものと思います。

東西差は特に表れなかったように記憶しています。

私は、たとえばネット検索ほかの方法で、仮に『トキサケ』が多い、という結果になったとしても、それをそのまま『どう読むか』の結果には使えないのではないかと思っています。(個人的には、読めと言われれば〔トキザケ〕と発音するように思います。)

また、連濁するかどうかによって、同音異義語を区別するたぐいのものもありますが、『鮭』『酒』はこれにはあたらないように思います。」

というご意見を頂きました。「表記と発音が一致しないケース」が「連濁」の場合(特に清音で書かれたものの発音に関して)はあるというご指摘です。ますます迷宮に迷い込みそうです。

また、MBS(毎日放送)のFアナウンサ-からは、

『MBSは『ときさけ』と濁らずOAしました。個人的には『ときざけ』と濁ると思っていたのですが、取材相手が『さけ』と濁らないと言ったそうで、MBSでも記者が『さけ』でルビを打っていました。これまでどうだったかがわかりませんが、私の記憶では『濁って』読んでいたと思います。理由は・・・わかりません。』

とのことでした。

テレビ大阪のCアナウンサーからは、

「うちのニュースでは『トキサケ』でOAしました。原稿およびスーパーも『トキサケ』のルビ入りでした。」

とのこと。

「サケ」の地元・北海道はどうなのか?STV・札幌テレビのAアナウンサーに聞いてみたところ、

「『トキサケ』と、濁りません。標準語かどうかは分かりませんし、そもそもこの鮭の種類に標準語があるのかも不明ですが、北海道では、私の知る限り『トキサケ』で大丈夫だと思います。また、『秋鮭』も『アキサケ』と、STVのニュースでは濁りません。『トキサケ』も『アキサケ』も、(北海道の)他の局でも同様です。『シャケ』ではなく、こちらでは『サケ』です。でも最近は、温暖化で海水温が上がって、鮭の定置網に高級魚の『ブリ』(出世した段階での本当のブリのサイズ)が揚がって、妙な事になっています。鮭よりも市場価格は高いのですが、『筋子(バラす前のイクラ)』が入荷しない加工業者は大変です。稚内に近い港で『ブリ』ですから・・・大丈夫なんだろうか、オホーツク海は・・・。」

ということで、北海道では「濁らない」ようですね。でも・・・その「サケ」の定置網に「ブリ」か掛かるとは!「濁る・濁らない」よりも、そちらの方がはるかに問題ですね、こりゃ・・・。

(2013、6、17)

(追記)

6月の用語懇談会放送分科会で、東京のテレビ局の用語担当者にも聞いてみたところ、全社、

「特に読み方は決めていない」

とのことでしたが、「もし出て来たら?」ということについては、

(NHK)過去の原稿では2件だけ出て来て共に「サケ」と濁らなかった。辞書はほとんど「ザケ」と濁るが、『大辞泉』だけ「サケ」と清音。

(日本テレビ)濁らない「サケ」が多い気がする。

(テレビ朝日)個人的には「ザケ」と濁る。でも「時ジャケ」と言ったほうがおいしそうな感じなのでフリートークなら「ジャケ」と言う。

(TBS)過去の原稿では3件。すべて「ザケ」と濁っていた。それぞれの取材先の団体は大阪市水産物卸売組合、札幌市豊平川水産センター、マルハニチロだった。(この部分、ちょっと聞き逃したので、正確な団体名かどうかわかりません)

(テレビ東京)フリートークなら「ジャケ」。

(フジテレビ)過去の原稿を検索しても出て来なかった。読み方は原則、取材先に聞くことにしている。」

とのことでした。

(2013、7、1)

2013年7月 2日 11:22 | コメント (0)

新・ことば事情

5155「いたしかねません」

 

東京からの出張帰りの大阪方面行き、最終の新幹線。車内アナウンスが流れてきました。

「本日は満席のため、グリーンへの切符のお取り換えは、いたしかねません」

え?!!!? 

「いたしかねません」?

ということは、

「いたす」

ということなのでしょうか?そんな訳、ないですよね、満席なんだから。

「いたしかねる=できない」

ということが分かっていないから、より丁寧に言って、しかも「出来ない」という「否定」のニュアンスを強めようと、最後に「ません」を付けたもんだから、訳のわからない"お笑いコメント"になってしまったというわけです。

あ、そうか!もしかしたら、金曜日、週末の最終の新幹線に乗っている、疲れ果てたお客さんに、

「苦笑」

という楽しみを与えようと考えて放った男性車掌、渾身の"ギャグ"だったのか?吉本新喜劇ならあり得ますね、このコメント。しかしそれなら、

「ごめんくさい」「いたしかねません・・・にゃわ」

とかも言ってほしかった。「新大阪行き」なんだし、許されるでしょう(?)。知らんけど。

(2013、7、1)

2013年7月 1日 15:00 | コメント (0)