新・ことば事情
5151「献花と供花」
<2011年5月30日に書きかけました。当時は「平成ことば事情4354」>
東日本大震災関連のニュースを見ていて出てきた言葉で「似ているが違う」というものに、
「献花」と「供花」
があります。パッと見ると、同じように思えます。どう違うのでしょうか?
イメージで言うと、「献花」は、
「慰霊碑などに花束や花輪を供える感じ」
で、「献花台」が用意されていたりします。しかも亡くなった方(故人)は、
「事故や戦争など、不慮の出来事で亡くなった」
ような気します。一方の「供花」は、
「お墓や仏壇に花を手向ける感じ」
で、亡くなった方は、
「ごく自然に亡くなった感じ」
がします。辞書を引いてみました。『広辞苑』。
*「献花」=「霊前などに花を供えること。またその花」
*「供花(きょうか)」→「くげ」に同じ。
*「供花(くげ)」=「(クウゲとも)仏前または死者に花を供える事。また、その供えた花。
とありました。うーん、あまり区別はないけど、「献花」が「霊前」なのに対して「供花」は「仏前」というイメージがあるな。
『精選版日本国語大辞典』では、
*「献花」=「神前や霊前などに花を捧げそなえること。また、その花。」
*「供花(きょうか)」→「くげ」に同じ。
*「供花(くげ)」=「死者や仏前に、花を供えて供養すること。または、そなえる花。くうげ。きょうか。」
ふーむ、「献花」は「霊前」に加えて「神前」も出てきましたね。「神道」は可、ですか。また「供花」は「仏前」だけでなく「死者」も出てきました。そして「献花」は「花を捧げそなえる」ですが、「供花」は「花を供えて"供養する"」んですね。ここ、ちょっと違いますね。ニュアンスの違いは分かってきた気がします。
『新明解国語辞典』も引きました。
*「献花」=「神前、死者の霊前などに花を供えること。また、その花」
*「供花」=「仏(霊)前に花を供えること。またその花」
と、やはり「献花」には「神前」が含まれるのに「供花」には含まれていませんね。これ、ポイントかな。