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『道浦TIME』

新・ことば事情

5143「OLは死語か?」

「OL」

という言葉は、もちろん、

「オフィス・レディー」

の略ですが、そもそもはオフィスで働く事務職の女性のことを、

「BG(ビジネス・ガール)」

と呼んでいたのですが、それが、いわゆる「夜の女」と言いますかそういった意味合いであるので良くない、他に良い呼び名はないか?と募集されて決まったのが、昭和30年代前半だったという風に書かれているのを読んだことがあります。たしか米川明彦先生の『明治・大正・昭和の新語・流行語事典』(三省堂)だったのではないか?本を開くと、やっぱり載っていました。

「OL」=OLが使われる以前にBGが使われていた。BGはビジネスガールの頭文字である。BGは1949年女性雑誌『スタイル』に使われて広まった語であったが、東京オリンピックを控えた1962年、BGはアメリカ俗語で売春婦(バーガール)を意味するので良くないと識者から指摘され、NHKは1963年9月、放送禁止用語にした。そこで、雑誌『女性自身』編集部が11月にBGに代わる語を公募したところ、1位が『オフィスレディ』だったところから、『OL』と頭文字化されて使われた。」

と記されていました。NHKの人から「放送禁止用語ではなかった。」と言われそうな記述ですが、まあ「好ましくない言葉だった」ということでしょう。「昭和30年代前半」ではなく「東京オリンピックを控えた年=昭和30年代後半」でしたね。

今でも一般の会話の中では「OL」「OLさん」と使われていますが、男女雇用機会均等法の施行から四半世紀、いわゆる「事務職」の「女の子」が減って、みんな「大卒」で男女とも一緒の「一般職」(呼び方は会社によって「専門職」だったりするみたいですが、つまり、短大卒の事務職の、"お茶くみの女の子""結婚までの腰掛け"的な人ではないということ)になった現在、「OL」という呼称は、古くなってきたのではないか、耐用年数が過ぎて来たのではないかな?と思うわけです。

そう感じたきっかけは、先日、「ゴビンダさん」に無罪判決が出た、

「東電OL殺人事件」

です。あの事件の名称の中には、「OL」が入っています。佐野眞一さんの作品のタイトルでもあります。事件の発生は、

「1997年3月」

でした。そして「再審無罪判決」は、

「2012年11月7日」

東京高裁で言い渡され、検察は上訴を放棄し無罪判決が確定。2013年5月、補償額いっぱいの6800万円余の賠償金が支払われました。

当日、あの事件を報じた報道機関の中には「OL」を使わずに、

「東電女性社員殺人事件」

などとしたところも、少なからずあったのでした。

事件発生から16年余の間に、時代も動いてきたということではないでしょうか。

「OL」の行方にも注目したいと思っています。別に「放送禁止用語」ではないですが。

(2013、6、27)

2013年6月27日 11:16 | コメント (0)