新・ことば事情
5126「拇印」
ちょっと昔の話になりますが「外国人登録制度」で、「指紋押捺」が、「拇印」を押すか押さないかが問題になったことがありました。最近は、あまり取り上げられないんですが。(指紋押捺は無くなったようですね。)そういった時などに、「拇印」を押す指は、どの指でしょうか?私は、ためらわずに、
「親指」
だと思いますが、どうも最近は、
「人さし指」
で「拇印」を押す人が増えているのではないでしょうか?聞くところによると、「指紋押捺制度」では、
「人さし指」
の指紋を押さされたそうです。また、「指認証」で部屋に入るときには、おそらく一番多いのは、
「人さし指」
だと思います。あまり「親指」で「指認証」をしている人は見かけません。銀行のATMの「指認証」も、「人さし指」が基本なのではないでしょうか?そういった影響もあるのかな?
そもそも「拇印」の「拇」は常用漢字ではない(表外字)なので、『新聞用語集2007年版』を見ると、
「拇△印→指印、母印、つめ印」 △=表外字
と言い換えることになっているようです。また、読売新聞社の『読売スタイルブック2008』を見ても、
「拇●印→指印、母印、爪印」●=表外字
と言い換えることになっているようです。
同じ「拇」という字を使う、
「外反拇趾」
の場合は、
「外反母趾(ぼし)」
と、「拇」の代わりに「母」を使って熟語にルビを振ったりしますが、『読売スタイルブック』の「拇趾」を見ると、
「拇●趾●→親指、母指(外反母趾ぼしは別)」●=表外字
とありました。そうするとやはり、
「『拇』は『親指』」
を指すのですね。だから「拇印」を押すのは「親指」であるべきなのでしょう。しかし、この、
「『親指』は、『お父さん指』」
で、
「『お母さん指』は『人さし指』」
なのではないか?「お父さん指」が「拇」ならば、
「『お父さん』が『お母さん』になってしまわないだろうか?」
という疑問が。「お父さん指」「お母さん指」というのは、「童謡」から出て来たのかな?
「おはなしゆびさん」( 香山美子作詞・湯山昭作曲)
という曲名のようですね。
「♪このゆび パパ ふとっちょ パパ」
という歌詞でしたね。
でも、太いからって「お父さん」とは限らないんじゃないかなあ・・・。