Top

『道浦TIME』

新・ことば事情

5120「貸し切りか?借り切りか?」

サウジアラビアの王子が、フランスのディズニーランドを3日間貸し切りにしたと。その総額は、なんと20億円というニュースが、スポーツ紙に載っていました。

その際にチラッと気になったのは、

「貸し切り」

という言葉。王子は「借りた」のだから、

「借り切り」

なのではないでしょうか?でも、あまり「借り切り」ってのは聞かないなあ。「動詞」で、

「借り切る」「借り切った」

というのは聞くけど、体言止めの「名詞形」の「借り切り」は、なじみがありません、やはり「貸し切り」でしょう。

きっと、

「貸し切り(状態)にする(した)」=「貸し切り」

という「省略語」として扱っているのではないでしょうか?

「貸し切り」(貸切)は、貸した側の言葉なんだけれども、それを「業界用語」として「借りている側」も使っているということなんでしょうね。

それならまあ、「許容」かなあと思うわけです。グーグル検索では(6月7日)、

「貸し切り」= 374万0000件

「貸切」  =2690万0000件

「借り切り」=   6万7700件

「借切」  =     7040件

でした。

「借り切り」という言葉は、『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『死因調現代国語辞典』には載っていますが、『広辞苑』『明鏡国語辞典』『岩波国語辞典』『NHK日本語発音アクセント辞典』には「借る切る」という「動詞」は載っていますが、「借り切り」という「名詞」は載っていませんでした。

また、『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』は、見出し語は「借り切り」だけですが、その語釈の中に「名詞形」として「借り切り」が載っていました。

辞書の用例などを見ていると、昔(明治時代ぐらいまで)はは、「貸し切り」と「借り切り」は対等に使われていたが、その後「名詞形」は「貸し切り」が「借り切り」を駆逐してその分の意味を占めてしまい、動詞形の「借り切る」だけが残っているというのが現状ではないか?というふうに感じました。

(2013、6、7)

2013年6月 9日 12:40 | コメント (0)