新・ことば事情
5114「山中か?山の中か?」
お昼のニュースを前にして、Mアナウンサーが質問して来ました。大阪府堺市の69歳の女性が行方不明になったニュースで、
「この、遺体が捨てられていたのは、『奈良県十津川村の山中で』とあるんですが、この『山中(さんちゅう)』は『山の中』とかみくだいた方がいいですかね?」
「いやあ、遺体が捨てられていた、という事件の場合は『山中』のままでいいんじゃないの?」
と答えました。「山の中」というと、
「子どもたちはピクニックに行った先の『山の中』で、お花を摘んでお弁当を食べたりしました」
みたいなイメージがあります。きっと子どもたちは、
「ピクニックに行った先の『山中で』」
は、「花を摘んだりお弁当を食べたり」は「しない」でしょう。
どう違うか?というと「硬い文章」の場合は「山中」、「軟らかい文章」の場合は「山の中」ということではないでしょうか?
「難しいことを易しく、易しいことをわかりやすく」
というのは、作家の故・井上ひさしさんのモットーだったと言いますが、それも文脈に合わせて判断するべきでしょう。
・・・と思ったら、同じニュースをテレビ朝日は原稿(ナレーション)もスーパーも、
「山の中」
としていました。NHKのナレーションは、顔出しのリード部分では、
「奈良県の山の中で」
で、スーパーは、
「山中」
でした。でも、本文では
「十津川村の山中で」
と、「山中」でした。ということは、
「どちらかが絶対正しいとは言えない」
ということですよねえ。もしくは、
「『奈良県の~』という『アバウトな場合』は『山の中』で、『十津川村の』と『具体性が増した』ら『山中』」
になるのでしょうか?意識して分けて書いたのかなあ?
その後、同じ日の夕方の読売テレビ「関西情報ネットten.」では、リード部分も本文も
「山の中」
でした。番組のスタイルにもよるのかなあ。