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『道浦TIME』

新・ことば事情

5102「2000本安打か?2000安打か?」

 

先日、長野で開かれた用語懇談会の総会で、朝日放送のA委員から、先ごろ2人の達成者が出たプロ野球の、

「2000本安打」

について、新聞表記・放送コメントで、

(1)2000本安打達成

(2)2000安打達成

2種類あったが、どちらが正しいのか?という質問が出ました。つまり、

「『本』が入るか?どうか?」

ということですね。

質問をした委員は、

「『2000安打達成』という『「本」なし』の表現は、放送上では今回初めて耳にしたと思う。新聞は去年の小久保選手・宮本選手・稲葉選手の達成の時には『2000安打』を使っていたが、放送では聞かなかった」

と言います。ちなみにNPBが出版している「セ・リーグのグリーン・ブック」や「パ・リーグのブルー・ブック」によれば、安打関連の記録には単位である「本」は使われておらず、すべて「2000安打」「1500安打」「400本塁打」等々となっているそうです。

この質問に関して私の結論は、

「両方、あり」

でした。

「きょうの試合で3本ヒットを打った」

ことを、どう言うかという場合に、

「きょうは3安打」

とも、もちろん言えますし、

「きょうはヒット3本打っています」

とも言えます。つまり「安打(ヒット)」の数詞は、

「安打、本」

の2種類あるということではないでしょうか?(実際『数え方の辞典』を引いてもそう書かれていました)

いや、「安打」「本塁打」を形容するものとして「数詞」が直接来る場合は、

「2000安打」「400本塁打」

となり、安打や本塁打の数を数える場合の「数詞」は「本」で、

「2000本」「400本」

といい、その数詞が「何の数字なのか」を説明するものが後ろについて、

「2000本安打」「400本本塁打」

となるが、「本塁打」の場合は「本」が2回続くので、それを嫌って「400号本塁打」「400本塁打」と言うのではないでしょうか?また、

「1安打完封」「25安打の猛攻」「1試合4安打の固め打ち」

などの場合は「本」は使わない。

・・・・

そうか、わかったぞ!

一本一本積み重ねて、正に「2000本目」という場合には「2000本安打」。

一方「通算」「合計」の本数としては「2000安打」に到達。

「2000本目」は「通算2000本」とほぼ同じ意味なので、両方使える。

「年間200本安打」を達成して、結局その年は最終的には「216安打」を放ったということもありえる。

ということで、

「序数」(順序を表す。「~目」で表せる)としては「2000本安打」、

積算の「総数」(通算・合計)としては「2000安打」

ということではないか?と考えました。

総会での放送各社の意見は、

(NHK)中継でどうだったかはわからないが、スポーツのニュース原稿では「2000本安打」

(TBS)昔「2000本はおかしいのでは?」という話もあったように思うが、今は「2000本安打」。

(NTV)これは「記録」なので中継では「2000安打」で「本」は「なし」でやっている。「次が2000本目になる」というコメントはある。

(フジテレビ)スポーツの原稿やタイトルでは「2000本安打」。

(テレビ朝日)スポーツアナウンサーに聞いたところ「どちらでもよい」とのこと。実況では「本」を入れる方が歯切れが良い。ただ「シーズン200安打」の場合は「本」を入れていない。

(テレビ東京)「本」を入れないのが正しいと思うが、現実では「本」を入れている。

(毎日放送)「2000安打」は耳慣れないので「2000本安打」。「きょう3安打」は使う。

(関西テレビ)統一していなが「本」は入れている。「記録」に関しては「本」は抜く。

(読売テレビ)「本」を入れると思う。ただ「通算」では「本」が入らず、「順序」で言うと「2000本目」と「本」が入る。

(テレビ大阪)使い分けている。「3本目のヒット」で表記は「2000安打」。

というようなところでした。

(2013、5、27)

2013年5月28日 10:55 | コメント (0)