新・ことば事情
5097「揺れ戻し」
『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』(村上春樹、文藝春秋:2013、4、15)
を読んでいたら、227ページに、
「揺れ戻し」
という言葉が出てきました。「揺り戻し」ではなくて、「揺れ戻し」。聞き慣れません。
国語辞典を引いてみると、『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『新選国語辞典』『新明解国語辞典』には「揺り戻し」は載っています(地震の「余震」の意味や、相撲の「呼び戻し」の別名として)が、「揺れ戻し」は載っていません。
『三省堂国語辞典』は、見出しは「揺り戻し」しかありませんが、語句説明の中に「ゆれもどし」がありました。
『岩波国語辞典』と『明鏡国語辞典』はどちらの語も載っていませんでした。
グーグル検索では(5月22日)、
「揺り戻し」=27万件
ありましたが、「揺れ戻し」は表示されませんでした。
「揺り戻し」「揺れ戻し」ともに「複合語」です。
「揺り戻し」は、「揺る」という文語の連用形+「戻す」なのに対して、「揺れ戻し」は「揺れる」という口語の連用形+「戻す」ですね。
文語でできているという「揺り戻し」の方が古い言葉で、これまでは、それしかなかったのに、『三省堂国語辞典』が「見出し」にはしていないが「ゆれもどし」と載せているということは、近年できた新しい言葉なのではないでしょうか?