新・ことば事情
5090「もう女じゃない」
電車の中で見かけた光景です。
向き合い4人掛けの席に座った、男性1人・女性2人のグループ。
「これは、女性だけにあげるよ」
と言って、60代後半と思われる男性から配られたパンフレット。それをもらった、やはり60代半ばか後半とみられる女性が発した一言が、
「よかった。もう『女じゃない』かと思ってたけど『まだ女』なのね」
このフレーズですが、「男性」は絶対に言わないと思いました。つまりこの「女」を「男」に置き換えて、
「よかった。もう『男じゃない』かと思ってたけど『まだ男』なんだね」
というセリフは絶対に聞かれない、と思います。ここにこそ、
「『女』と『男』の根本的違い」
があるのではないか?と思ったのです。それはもう、お気付きかと思いますが
「生殖機能」
なのではないでしょうか?
先日、教えに行っている甲南大学の学生たちに「辞書」の話をしたときに、課題としてやらせたのは、
「自分の辞書を作りなさい」
ということで、
「次の言葉の説明を"辞書的に"書きなさい」
というものでした。「次の言葉」とは「男」「女」「ことば」「ケータイ」の4つです。その中の「男」「女」について書かれたものの多くに、「女」は、
「人間の性のうち、子供を産む能力のあるほう」
と書かれていました。男女を分ける時に、やはりこれは大きなポイントなのだなあ・・・と感じた「電車の中で耳にした一言」でした。