新・ことば事情
5085「三昧」
先日、父と義父と一緒に話をする機会がありました。父は三重県出身、義父は和歌山出身です。その、父の話の中で、
「昔はうち(三重県名張市)のあたりは"土葬"だった。うちの父(私の祖父)の葬儀の時、初めて"火葬"になった。"土葬"の際は山の中に深い穴を掘って遺体を埋める。その穴の掘り手は当番だが、弔いの後の直会(なおらい)では、一番上座に座ることができた。お寺の墓の下には、何も入っていない。遺体を埋める場所のことを『さんまい』と言った」
という話が出てきました。それを聞いた義父が、
「ああ、うちも『さんまい』と言いました」
と言うではありませんか!
「どんな字を書くんですか?」
と聞いたら、
「『贅沢三昧』などの『三昧』や」
というのです。その「三昧」で知っているのは
「贅沢三昧」「読書三昧」
など「○○三昧」で「ざんまい」と濁って使うことしか知りませんでした。
『広辞苑』を引くと、「三昧」というのは、
「『三昧場』の略」
で、その「三昧場」というのは、
「死者の冥福を祈るために設けた墓地に近い堂。また、墓所。三昧」
とあります。そして、そもそも「三昧」は仏教用語(ということはサンスクリット語)で、
「(梵語samadhiの音訳。三摩地・三摩堤とも。定・正定・等持・寂静などと訳す)心が統一され、安定した状態。一つのことに心が専注された状態。四種三昧・念仏三昧など諸種の行法がある。」
と記されていました。「三昧」での「掘り手」を、父はしたことがなかったそうですが、以前「掘り手」をしたことがある叔父に聞いた話では、
「少し掘ると、少し前に亡くなった人の骨が出て来た。前の当番の人が手を抜いて、浅くしか掘らなかったからだ」
というようなこともあったようです。やはり「土葬」は大変ですね・・・。