新・ことば事情
5073「けしからない」
『日本の領土問題~北方四島、竹島、尖閣諸島』(東郷和彦・保阪正康、角川oneテーマ21:2012 、2、10)という本を読んでいたら、東郷和彦さんが書かれた中に、
「ロシアが択捉・国後をもっていくことはけしからないという趣旨はギリギリ伝えているという議論は正しいと思う。」(37~38ページ)
という文章がありました。この、
「けしからない」
に引っかかりました。これは、
「けしからん(けしからぬ)」
ではないのでしょうか?文語調の「ん(ぬ)」を口語調の「ない」に置き換えていいのでしょうか?耳慣れない言葉です。
『精選版日本国語大辞典』で「けしからん」を引くと、「けしからぬ」を見よと。「けしからぬ」を引くと、
(形容詞「けし」の補助活用未然形に打消の助動詞「ず」の付いたもの)
と語構成の説明があり、「補注」の中に「けしからない」も載っていたので見てみると、ちゃんと立項されていました!
「けしからない」=(「けしからず」の「ず」の代わりに東国風の「ない」を用いたもの。明和初期からの江戸の流行語。)
なんと!「明和」と言えば、1764年~1772年。今から250年も前に江戸で流行った言葉だったとは!
あ、そういえば江戸っ子風に「ない」を「ねえ」に代えて、
「けしからねえ」
とすると、時代劇などで聞いたことがある気がしてきました。そいつぁー、気が付かなかったい!!
するってぇーと、東郷さんは「江戸っ子」ということなのですかね?