Top

『道浦TIME』

新・ことば事情

5076「完全試合」

 

4月の新聞用語懇談会放送分科会で、フジテレビの委員から、こんな質問が出ました。

「『完全試合』の読み方で、『試合』は『シアイ』でしょうか?それとも濁って『ジアイ』でしょうか?」

集まった30人余りの各社の用語委員に「挙手」で聞いたところ、

「ジアイ」

「濁る」という人が大多数でした。その中で、TBSの委員は、

「ラジオ中継では『シアイ』と濁らないです」

テレビ大阪の委員からは、

「『無四球試合』の場合は『ジアイ』と濁りますね」

また、日本テレビの委員からは、

「巨人・槙原投手が『完全試合』を達成した時は『シアイ』と濁りませんでした」

調べてみると槙原投手の完全試合が、実は現在最後の「完全試合」で、達成されたのは、1994年5月18日。つまりもう19年間も、日本のプロ野球では「完全試合」は達成されていないのです!この間のダルビッシュ投手は惜しかったなあ。

NHKの委員からは、

「昔は『シアイ』と濁りませんでしたが、その後、この問題を棚上げする為か(どうかはわかりませんが)『パーフェクトゲーム』という呼び方がメーンになりました。『NHKアクセント辞典』では、『シアイ』『ジアイ』を併記しています。以前取ったアンケートによると『シアイ』=31%、『ジアイ』=68%でした。20~70代は7割以上が『ジアイ』と濁っていました」

という意見が出されました。

皆さんは「シアイ」「ジアイ」、どちらを使いますか?それとも「パーフェクトゲーム」?

参考までに過去の「完全試合」を記しておきます。日本のプロ野球では過去「15回」、『完全試合』が達成されています。15回しかなかったのか!

   【達成月日】     【達成投手(所属)】【対戦相手】

   1950, 6,28  藤本英雄(巨人)   西日本

   1955, 6,19  武智文雄(近鉄)   大映

   1956, 9,19  宮地惟友(国鉄)   広島

   1957, 8,21  金田正一(国鉄)   中日

   1958, 7,19  西村貞朗(西鉄)   東映

   1960, 8,11  島田源太郎(大洋)   阪神

   1961, 6,20  森滝義巳(国鉄)   中日

   1966, 5, 1  佐々木吉郎(大洋)  広島

   1966, 5,12  田中勉(西鉄)    南海

   1968, 9,14  外木場義郎(広島)  大洋

   1970,10, 6  佐々木宏一郎(近鉄) 南海

   1971, 8,21  高橋善正(東映)   西鉄

   1973,10,10  八木沢荘六(ロッテ) 太平洋

   1978, 8,31  今井雄太郎(阪急)  ロッテ

   1994, 5,18  槙原寛己(巨人)   広島

 

わたしの記憶に残っているのは1968年の広島の外木場投手からですね。

それにしても、驚きました。「完全試合」って、そうそうできるものじゃないとは思っていましたが、1950年代に5回、1960年代にも5回、つまり2年に1回ペース、そして1970年代には4回あったのに、1980年代は「ゼロ」、1990年代は「1回」、2000年代(ゼロ年代)は「ゼロ」、そして2010年代もここまで「ゼロ」。つまり、"最近の35年間で、たったの1回しか達成されていない"んですね、日本野プロ野球では!

球団別の回数を見てみると、「完全試合を達成した球団と回数」は、

1、国鉄=3回

2、巨人・近鉄・西鉄・大洋=各2回

3、広島・阪急・ロッテ・東映=各1回

ということで、「国鉄」が1956年から3年連続で毎年「完全試合」を達成していたというのは、半世紀以上前の「国鉄」のピッチング・スタッフが、いかに充実していたかを示していますね。ローマ帝国の衰亡を見ているみたい。完全試合を達成した当時のほぼそのままのチーム名で残っている球団は「巨人・広島・ロッテ」の3球団で、残りの6球団はチーム名が変更(親会社が変わった)されていますね。

逆に「完全試合をやられた球団と回数」は、

1、広島=3回

2、中日、南海=各2回

3、ロッテ・西日本・大映・太平洋・大洋・西鉄・東映・阪神=各1回

ということで、こちらは広島が3回もやられています。弱小チームだったのですね。「やられた球団」の中で、ほぼそのままの名前で残っているのは、「広島・中日・ロッテ・阪神」の4球団。消滅したり、親会社が変わった球団は「南海・西日本・大映・太平洋・大洋・西鉄・東映」の7球団。完全試合をやられたから無くなったわけではないでしょうけど。チーム名を見ていると、日本の企業の栄枯盛衰を感じますね。電鉄会社や映画会社が親会社だった時代があったのだなと。あ、今も、阪神・西武と電鉄会社は健在ですが、昔は、南海、阪急、近鉄、西鉄、国鉄(今のJR)もあったよなあ・・・ということです。

それにしても「完全試合」は、「なかなか、出て来ない言葉」なのですが、用語懇談会でこの話をした(4月19日)とたん、翌々日の21日に「東京六大学野球」で、早稲田大学の・高梨雄平投手が東京大学戦で「完全試合」を達成しました。東京六大学野球史上でもたった「3人目」だそうです。珍事(椿事)ですね。

それにしても、ダルビッシュは惜しかったよなあ・・・。今シーズン中に、もう一度、あんな形で「やってくれる」のではないかと期待しています。

(2013、5、9)

2013年5月 9日 11:26 | コメント (0)