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『道浦TIME』

新・読書日記 2013_077

『絵とは何か』(坂崎乙郎、河出文庫:1983、10、4初版発行・ 2012、12、20新装初版発行)

 

帯に作家の伊坂幸太郎さんが文を寄せている。

「小説家になろうと思ったのはこの本のおかげだ」

と。単行本は1976年に出ている。ずいぶん古い本だが、それがまた新たに文庫で出たのは伊坂さんの推薦があったからではないだろうか?そこに興味を持って購入。

著者は1927年生まれで1985年に亡くなっている。実は私は大学時代(1980年~1984年)、坂崎乙郎先生の講義を受けた。と言っても「美学」の授業ではなく「ドイツ語」の授業だったが。坂崎先生は「厳しい」ということで有名だった。授業も厳しかったが、何より「成績評価」が厳しく、単位を落とす学生が続出・・・というウワサだった。授業で、ドイツ語の購読、読んで行ってその文章をスラスラと見事に訳した学生に、

「今、×××という単語は、どう訳した?」

と聞き、すぐに答えられない(つまりアンチョコを丸写ししただけ)と、

「そこがわからなければ、訳せないはずなんだがなあ・・・」

と教室内をカツカツと歩きながら、「もう、いい!」と、授業途中で帰ってしまったり。その学生は単位を落としたと聞く。

また、天気がいい日は、教室に来るなり窓辺へ行き、しばらく無言で空を見上げたあと、

「いい天気だなあ・・・よし、きょうは授業なし!」

と突然言い放ったり。「何だ、この人は!」と、大阪の田舎から出て来たばかりの私は怒ったり恐れたり、なんだかわけがわからなかった。その後「本当はエライ人なんだ」と知ったが、それからしばらく経って、新聞で訃報を読んだ・・・。あ、ドイツ語は「絶対落とした」と思ったの、ギリギリ「可」で再履修を免れた。ダンケ・シェーン、ヘル・サカザキ!

この本で坂崎先生は「ゴッホ」を最大限に崇拝している。

そうか、そんなにゴッホはすごいのか。そしてその中で、

「なぜゴッホはあれだけ自画像を描いていながら、一緒に暮らしていた弟・テオの肖像画を、一枚も書かなかったのか?不思議である」

と書いている。(というか、この本は「講演録」なんだけどね。)

ところが!先日、京都市美術館で開かれている「ゴッホ展」を見に行ったら、

「これまでゴッホの自画像と思われていたもののうちの何点かは、弟・テオの肖像だった」

という衝撃の事実が!泉下の坂崎先生が聞いたら、「ほうら、やっぱり!」とおっしゃるのだろうか。


star4

(2013、4、27読了)

2013年5月 5日 12:37 | コメント (0)