新・ことば事情
5067「オレオレ詐欺復活」
4月23日の読売新聞朝刊の地方版(京阪版)に、
「オレオレ詐欺1000万円被害」
という見出しが出ていました。4月22日に大阪府八尾市内に住む70歳代の女性が、電話で息子をかたった男に1000万円をだまし取られる被害に遭ったというのです。その見出しを見て、
「あれ?『オレオレ詐欺』は『振り込め詐欺』という名前に変わったんじゃなかったっけ?」
と思って記事を読んでみたら、この事件では「振り込め」と言っていない、つまり金融機関への振込みを通じての詐欺ではなく、電話で指定された駅の近くの路上で待っていたら声をかけて来た男に、現金を手渡していたというものでした。
その後23日午後になって、今度は大阪・泉佐野市で60代の女性からの金の受渡し場所に現れた20代と40代の男が逮捕されました。
この手の詐欺は、当初は電話で「オレオレ」と言って息子だと思わせて金を振り込ませる手口だったので、
「オレオレ詐欺」
と名付けられたのですが、その名称が定着したことで、「オレオレ」と名乗らなくなった。でも、相手に金を振り込ませる手法は同じだったので、今度は、
「振り込め詐欺」
という名称に変わった。ところがところが、今度は「振り込め詐欺」という名前が定着したことで、その手口が使えなくなった犯人たちは、また裏をかいて、
「振り込ませないで、直接手渡しする」
という手法になって来た。その手渡しの場所などを指定する電話では再び、
「オレオレ」と名乗るようになったので、
「『オレオレ詐欺』という名称が復活した」
・・・これって「イタチゴッコ」というのではありませんか?
いま、警察は、「振り込め詐欺ではない手口の詐欺の名称」を公募しています。そうやって世の中の注意を喚起するためには、名称の公募も一つの方法で否定はしませんが、いくら名前を付けても、すぐに裏を書く手法が編み出されるのでは、徒労に終わるような気も・・・。そもそもこれって、シンプルに
「詐欺」
でいいのではないでしょうか?
(追記)
5月12日、警視庁は、公募していた「振り込め詐欺」に代わる名称を発表しました。応募作品が1万4107点で、その結果決まった名前(最優秀作品)が、
「母さん助けて詐欺」
なのだそうです。「父さん」は騙されないのか?というのが気になりますが・・・。
優秀作品は、
「ニセ電話詐欺」「親心利用詐欺」。
そもそも「振り込め詐欺」という名称は、平成16年(2004年)に警察庁が決めたもので、こちらも定着しているので今後も使うそうです。
(2013、5、19)