新・読書日記 2013_061
『 男は邪魔~「性差」をめぐる探求』(髙橋秀実、光文社新書:2013、4、20)
いやあ、おもしろい!最近この著者(ちなみに同い年だ!)の著作は(『弱くても勝てます~開成高校野球部のセオリー』新潮社)、おもしろい!
冒頭からグイグイと強引に(男にとっては)理不尽な世界へ引き込まれる。まるで「落語」の登場人物のようであるが、「実話」なんだろうか?かなり誇張されているのではないだろうか?まさかこんなことを口にする女の人がゴロゴロいるなんて・・・。しかも、その中心に据えられているのは、著者の奥様・・・。
「男ってバカで邪魔」
「男が役に立つ場面は、すべて女がそうなるように仕向けているのよ」
「たしかに、男はゴミっていう感じよね」
「トイレだって汚れをまき散らすでしょ。自分で掃除するわけじゃないのに。私はいつも汚さないようにキレイにキープしようとしている。それなのにあなたは汚すだけ。私が掃除しているからあなたはいつもキレイなトイレを使えるけど、私が使う時は汚れたトイレになっている。おかしいでしょ、これ。それだけわたしの人生が蝕まれる。邪魔というより邪魔臭い。はっきり言ってゴミ。ゴミそのものなのよ」
ズキッ!・・・橋下市長でもここまでは言わないのでは・・・。さらに、
「でも、ゴミにも使い道はあるしね」
―――どんな?
「リサイクル、リメイク、あと埋め立てとか」
彼女はそういって大笑いした。
・・・奥さん、あなたは悪魔ですか!!"悪魔"は追い打ちをかける。
「ゴミのくせに勝手に動くヤツがいるでしょ。浮気したり。そういうのは即刻、埋め立て。しっかり踏みつぶしておかないとね。あっはっはっは」
もう、いつ"殺人事件"が発生してもおかしくないようなおぞましい光景を、冷静に書きとめる著者。「これって"実話"じゃあないですよね」と私が思わざるをえなかった理由も、皆さんにはしっかりと伝ったと思う。
この本と同時に読んでいた、村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』(文藝春秋)の中でも、相手の女性の恋心に気付かなかった主人公・つくるに対して、女性がこう言い放っていた。
「それは君が馬鹿だからだよ」
うすうす、気付いていないこともなかったが、やっぱりそうなのか。男ってバカ、しかも子供の頃から、いや、生まれつき・・・。
冒頭部分をヨメに読み聞かせたところ、ヨメはニコリともせず、
「そう。7割方、その通り。それを自覚すべきよ」
と言い放って、寝室のドアをピシャリと閉めた・・・。
後半、少し"スピード感"は落ちるが、男にとっては「目からウロコ」の本。ただし女にとっては、
「今頃気づいたの?だから男ってバカなのよ」
という本。
それにしても「今月の光文社新書」は、飯間さんの『辞書を編む』といいい、「ヒット連発」だなあ。「ヒット」と言っても「単打」ではなく、これは「左中間を深々と破るランニングホームラン」だと思います。(「バカ」って言うほうが「バカ」だ~い!バーカ!!)
「おもしろうて やがて悲しき "男"かな」