新・ことば事情
5061「雨粒の読み方」
3月23日、F1中継を見ていたら、男性実況アナウンサーが、
「雨粒」
のことを、
「あめつぶ」
と「2度」言うのを耳にしました。結構ベテランのアナウンサーさんだと思うのですが・・。・傍らにいる、解説の片山右京さんは、
「あまつぶ」
と話していました。
「雨~」は「あめ~」と言うべきか?それとも「あま~」と言うべきなのか?
念のため国語辞典を引きました。
『新明解国語辞典』『岩波国語辞典』『NHK日本語発音アクセント辞典』は、「あまつぶ」のみで、「あめつぶ」は載っていません。『新選国語辞典』も、どちらも見出し語にはありませんでした。『新潮現代国語辞典』も、どちらも見出しにはありませんでしが、「あま」は「その下に言葉を伴って造語を作る」旨のことが書かれていました。
そして『広辞苑』を引くと「あまつぶ」の見出ししかありませんでしたが、語釈の中に、
「あめつぶ」
も書かれていました。『三省堂国語辞典』『明鏡国語辞典』『デジタル大辞泉』も同じ。
そして、『精選版日本国語大辞典』は、なんと「あまつぶ」は「空見出し」で「→あめつぶ」となっていました。つまり「本見出し」は「あめつぶ」だったのです!
用例は、徳富蘆花の『思い出の記 五』(1900-01)で、
「風にまじって葡萄大ほどの雨粒(アメツブ)ぽつり真額(まっかう)を打つ」
とありました。
ということは、もともとは「あめつぶ」だったものが「あまつぶ」に変わって来たということでしょうか?私が生まれてこのかた、つまりここ50年はもう、「あまつぶ」だったと思いますが。
読売テレビのアナウンス部で、
「皆さんは、『雨粒』を放送でどう読みますか?
(1)アメツブ
(2)アマツブ
人に聞いたり辞書を引かずにお答えください。」
と聞いたところ、すぐに返事が戻って来ました。それによると、
(1)アメツブ= 0人
(2)アマツブ=15人
でした。
2013年の現在、厳密には「あめつぶ」も「間違い」とまでは言えないですが、少なくとも放送では(読売テレビでは)、
×「あめつぶ」→○「あまつぶ」
としたいと思います。