新・ことば事情
5053「杮と柿」
2013年4月2日、建て替えが済んだ五代目の「歌舞伎座」が開場しました。
この歌舞伎座、もちろん屋根のある建物で、そこでの初公演ですから間違いなく、
「杮(こけら)落し」
です。この件に関しては「平成ことば事情3628杮落し」をお読みください。
そして今回、当の歌舞伎座の表記は、
「杮葺(こけら)落とし」
と、「葺」という漢字が入っていました。昔、神戸市に、
「葺合(ふきあい)区」
というのがあったのと、
「茅葺(かやぶき)」
の「葺」で知っているので、意味は大体わかりますが、このような並びで書いて「こけら」と読ますこともあるのだなと初めて知りました。結構難しい漢字ですね。
それはさておき「杮(こけら)」は「柿(かき)」に似ています。
きょうは、その違いを「ビッグサイズ」でご覧いただきましょう。
杮・こけら
柿・かき
どうでしょうか?お分かりいただけましたか?えっ、字が小さすぎる?気のせいでしょう。
「こけら」は縦の棒が一本つながってスッと通っているのに対して、
「かき」は、上が鍋蓋で、下の棒とがつながっていないんですね。手書きで書くと上のチョンと点みたいに書いたものと、下の棒が切れている。一方の「こけら」は一本つながっていると。そういう違いなんですが、まあ、普通の大きさの印刷字体を見ても、ほとんど気付かないのではないでしょうか。しかもこのニュース、テレビでは、
「こけら落とし」
と「平仮名表記」にしていたところも多かったから、気付くはずもないですね。