新・ことば事情
5051「『よく』と『よくぞ』と『よくも』の違い」
会社の近くのコンビニで弁当を買って帰る途中に、五十嵐アナウンサーが立ち話をしているのを見かけました。彼は、私が通ったことに全く気付かない様子で話をしていましたが。会社に戻ってから、五十嵐アナウンサーを見かけたので、
「さっき、そこで立ち話してたろ」
と言うと、
「よくぞご存知ですね」
と言いました。うん?「よくぞ」?おかしい!これはどう考えても、
「よく知ってますね」
と言うところでしょう。「ぞ」は付かないですよね!
でも考えてみると、「ぞ」は「強調」の意味があるのですから、「よく」を強めるのに付けるようにも思えます。でも、使わない。「よくぞ」を使った例文を挙げると、
「よくぞ、聞いてくれました」
「よくぞ、来てくれました」
「よくぞ、やっつけてくれました」
のように、
「よくぞ~してくれた」
という呼応があるように思えます。ですから先ほどの五十嵐アナウンサーのような「知る」と「よくぞ」を使うのなら、
「よくぞ知っていてくれました」
と使わなければいけないと思います。でも、これだと意味が変わってきますけど・・・。
また、「よく」に「も」が付いた「よくも」の場合の例文は、
「よくも、裏切ったな」
「よくも、侮辱したな」
「よくも、だましたな」
のように、
「よくも~したな」
という呼応があるように思えます。しかも、
「よくも」の後には、あまりいい言葉が来ない
感じです。全部、私の51年の言葉の体験から言えることですが、五十嵐君の30年の言葉の体験とは、どうも違った体験のようです。
「よくぞ」の呼応も、「よくも」の呼応も、
「してくれた」「した」
というように、自分に関係のあることに関して「やり・もらい関係」のように思えます。うーん、日本語ってややこしいですね。ところで、五十嵐アナウンサーは、この件に関して
「よくぞ書いてくれた」
と言っているでしょうか?それとも、
「よくも書いてくれたな」
と言ってるでしょうか?それとも、
「よく書いてくれた」
でしょうか?この場合は「よくぞ」と「よく」はほぼ同じ意味で使える気がしました。