新・読書日記 2013_057
『生きる力~心でがんに克つ』(なかにし礼、講談社:2012、12、20)
作詞家としても、その後作家としても成功を収め、現在はテレビのコメンテーターとしても活躍する著者が、がんにかかった。いくつもの病院で「手術しかない」と言われたが、心臓に病を抱える著者はその道を拒否、「陽子線治療」というまだ日本に7か所(当時)しか行われていない治療に賭けた。必ずしもすべてのがんに効果があるわけではない(というか、どんな状態の患者でも受けられるというわけではない)らしいが、成功した一つの例として読むこともできる。本人はカミュやカフカ、トーマスマン、ショスタコービッチといった文豪や大作曲家の作品を引き合いに出しながら、治療中心境を語っていく。そういった文学的な闘病記としても読める。強烈なエリート意識(実際そうだし)、とプライド、満州からの「引き上げ者」ということに対する思いなど、複雑な心境も読み取ることもできた。
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