新・ことば事情
5037「イギリス積みとフランス積み」
2007年5月に青森県弘前市で行われた新聞用語懇談会に出席した際に、ちょいと足を伸ばして、太宰治の生家「斜陽館」に行きました。なかなか立派なお屋敷で、「昔の田舎の家」を久しぶりに見ることが出来ました。(また、前の売店で太宰の『津軽』を購入し、帰りの列車と飛行機の中で読みました。)
その際に、太宰の生家の「蔵」を見学していたら、レンガの積み方について、
「『イギリス積み』と『フランス積み』」
があることがわかりました。それによると、
「イギリス積み」というのは、一列目はレンガを「横」に長く並べ、その上の二列目はレンガを「縦」に積み、三列目はまた「横」に積む、ということを繰り返す積み方です。こうすると見た目は、奇数列と偶数列でレンガの並びが異なります。
一方の「フランス積み」は、同じ列で「横・縦・横・縦」を繰り返して並べる積み方です。
そんなこと、意識したことなかったなあ。「斜陽館」の塀というか柱のレンガは、「フランス積み」のようでした。
先日、そのことを久しぶりに思い出しました。京都の南禅寺を訪れたのですが、有名な「水道橋」を見たときに、レンガの積み方が、
「イギリス積み」
であることに気付いたからでした。
辞書を引いてみると、ちゃんと載っていました。『精選版日本国語大辞典』には、
*「イギリス積み」=煉瓦(れんが)の積み方の一つ。レンガの木口(こぐち)を見せる木口積みと、長手(ながて)の側を見せる長手積みとを各段交互に積む方法。
*「フランス積み」=煉瓦の積み方の一種。同段に長手と木口を交互に積む方法。
(実は「イギリス積み」の方には「木口」と、「フランス積み」の方には「小口」と書かれていたのですが、「木口」に統一しました。)
これについては「平成ことば事情」で書いたことがあるように思ったのですが、検索しても出て来なかったので、また書きました。
(2013、3、18)
(追記)
合唱団の先輩のFさんが先日東京に行った際に、日本キリスト教団の、
「霊南坂教会」
を訪れたそうです。我々世代から言うと、あの「山口百恵と三浦友和の結婚式」が行われたことで有名な教会ですね!
その建物の、「霊南坂教会」と書かれているレンガ造りの壁の写真が、フェイスブックに上がっていました。それを見ると、この「霊南坂教会」のレンガは、「長いレンガの列」と「短いレンガの列」が「ミルフィーユの」ように交互に積まれた、
「イギリス積み」
でした!